多量の制汗用のスプレー缶(主成分LPG)のガスを抜いて廃棄物処理中、引火爆発
業種 | 産業廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | コミュニケーションなど | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100207
発生状況
この災害は、産業廃棄物となったLPGの入ったスプレー缶を手作業で穴開け作業中に、工場内に流れ出したLPGに着火し、爆発したものである。化粧品メーカで製造された約18万本の未使用の制汗用スプレーが不要となり、産業用廃棄物として処理することとなった。この制汗用スプレー缶は、長さ13cm、直径3.6cmの小型のもの(内容積132ml、内容量の重さ60g)で、成分は香料成分が10%で、残りがブタンを主成分とする噴射剤で90%を占めている。
処理方法は、開放された工場内で釘にスプレー缶を打ち付けて穴を開け、ブタンガスなどスプレー缶内のガスを大気中に放出する方法で行われた。
災害発生当日、午前8時から2名の作業員が作業台の前に座り、フォークリフトで運ばれてきた段ボール箱内のスプレー缶を取り、ガス抜き作業を開始した。約200本のスプレー缶の穴あけ作業を終わったとき、工場入口付近で小さな爆発音とともに火炎が発生したのが確認され、瞬時のうちに工場全体が火炎に包まれ、4人の作業員が火傷を負った。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 スプレー缶からブタンを主成分とするLPGの開封場所で局所排出が行われなかったこと。
2 スプレー缶から放出された大量の液化ブタンが気化して流れ出し、爆発範囲に入ったこと。
3 スプレー缶の梱包の開封中に、梱包に使用した塩化ビニールのフイルムまたは作業服からの静電気放電などにより着火したこと。
4 LPGのような可燃性ガスについて、液化されたブタン、プロパン等の気化特性やガス比重、着火・爆発の危険性、スプレー缶を開放するときの局所排気設備の必要性などについて、安全教育がなされていなかったこと。
5 火災・爆発発生時の避難方法など緊急時の対処方法についても、作業員に周知徹底されていなかったこと。
対策
この災害は、産業廃棄物となったLPGの入ったスプレー缶を手作業で穴開け作業中に工場内に流れ出したLPGに着火し、爆発したものであるが、同種の災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 LPG入りスプレー缶を極低温に冷却し、内部のブタンなどの可燃性ガスを液体として回収し、再利用するような方法を確立すること。
2 スプレー缶内のLPGのように、気化した時のガスの比重が空気より大きいものは、強力な排気能力のある換気設備を設置して、吸引し、排出する必要があること。
3 工場全体の換気を行うと同時にガス濃度警報設備を設置しておくこと。
4 LPGのような可燃性ガスを取り扱う場合は裸火の使用を禁止し、電気設備は防爆構造のものとすること。また、作業服や作業靴は、静電気が帯電しにくい静電気防止服や静電靴を着用する必要があること。
5 化学安全、特にLPGの物理特性、着火特性に関する教育・訓練を実施しておくこと。