動力噴霧機のタンクに殺虫剤を入れて散布の準備をしていたところ、散布ノズルから殺虫剤が噴出
業種 | ゴルフ場 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 組立、工作の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100197
発生状況
この災害は、殺虫剤を噴霧器に入れて、散布ノズルのホースを解いている際に、散布ノズルの流量調節レバーが開き、顔面に殺虫剤が噴射されたものである。ゴルフ場コース管理者である被災者は、コース巡回途中で、これまで発見されたことのない害虫を捕獲した。そこで、防除業者から、譲り受けた農薬の効果を確認しようとして、機材置場にあるカート車を改造した散布車に載せられている噴霧器用タンクに希釈した殺虫剤を20リットルを入れ、エンジンを始動した。
そして、散布ノズルの噴出口を手で保持して、巻かれているホースを延ばしているときに、散布ノズルに取り付けられている噴霧量調節用のレバーが、ホースや周囲の物と接触して開いてしまったため、殺虫剤が被災者の顔面に向け噴射され、その一部を飲み込んでしまった。
被災直後、顔を洗い、水を飲むなどの応急措置をしたが、約20分経過後に気分が悪くなり、近くの病院で医師の診察を受けたところ、薬物中毒と診断され、入院加療を受けることとなった。災害発生時、被災者は、ポロシャツに作業ズボンという服装で、保護眼鏡、保護手袋、保護マスクなどの農薬を取り扱うための保護具を着用していなかった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 噴霧器の開閉レバーが確実に閉じられていなかったか、開いた状態でエンジンを始動したため、ホース内に殺虫剤が流れ込んでいたこと
2 被災者は、散布車の取り扱いを年に2〜3回程度しかしていなかったため、ホースの引き延ばし作業がスムーズに行われず、ノズルがホースに絡み、散布車のいずれかにぶつかるなどして流量調整レバーが開いてしまったこと
3 リールに巻き取られているホースを引き延ばすときに、ノズルの噴出口を顔面に向けて手に持っていたこと
4 殺虫剤を取り扱う作業については、「コース管理業務安全マニュアル」が作成されており、このマニュアルでは保護具の使用を規定しているものの、具体的に保護具の指定や、その使用方法については定められていなかったこと
対策
この災害は、殺虫剤を噴霧器に入れて、散布ノズルのホースを解いている際に、散布ノズルの流量調節レバーが開き、顔面に殺虫剤が噴射されたものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 ホースを引き延ばすときは、噴射ノズルを引っ張る程度で引き延ばしができるなど構造的な改善を行うこと。
2 レバーは、その形状を変えたり、物が当たる程度で開かないようにカバーを設け防護するなどの改善を行うこと。
3 取り扱う農薬ごとに保護具を具体的に定め、その使用の徹底を図ること。
4 農薬を保管または取り扱う場所には、名称、成分及びその含有量、人体に及ぼす作用、
貯蔵又は取扱い上の注意、身体に暴露したときの応急処置の方法などを掲示すること。
5 マニュアルは、取り扱う農薬ごとに必要な手順、必要な保護具など具体的に記述すること。散布車などの機器類についても同様に、その取扱い要領を定めること。
6 農薬を取り扱う従業員に対して、その有害性および保護具の使用などの対策について教育を実施すること。