新築工事の地下室で塗装作業中、有機溶剤中毒
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100192
発生状況
この災害は、10階建のマンション建築工事で、塗装業の労働者3名が5室に区画された地下室の壁に下地塗りをしていた時に地下室に充満した有機溶剤により全員が中毒にかかったものである。災害当日、作業者達は、有機溶剤の入った結露防止用下地塗料を使用し、地下室の5室の内B〜Eの外周壁の塗装作業を行った。午後4時30分頃から有機溶剤の臭気が強くなったが、そのまま作業を続けた。塗装会社では、作業者達の帰りが遅いので、事業者が真夜中に現場に行ったところ、地下室に倒れている3名を午前0時に発見した。
被災者3名は、ただちに救急車により救助され、病院にて有機溶剤中毒及び化学熱傷と診断され休業14日から60日の治療を受けた。
原因
この災害の原因としては次のことが考えられる。1 結露防止の塗料について
成分含有量:トルエン50〜60%
酢酸エチル20〜30%
イソプロピルアルコール(IPA)
5〜10%
第2種有機溶剤、正味重量16kg。
2 作業場の状況
地下室は、A〜Eまでの5室に仕切られていた。塗装はB室から順次E室までを塗ることになっていた。しかも、E室は受水槽室で、間口700cm、奥行450cm、高さ347cmであり、その底には幅30cm、高さ60cmの3つの、基礎梁が出入り口から、193cm・171cm・171cmの間隔で設けられていた。
3 この地下室には換気装置は無く、また、開口部は1階に通ずる幅92cmの階段一つしかない構造で、さらに、E室の出入り口は幅92cm、高さ235cmの一つしか設けられていなかったため、有機溶剤含有の塗料による塗装作業により有機溶剤の空気中の濃度が高くなった。
そのため作業途中に休憩をたびたび取る必要が生じていたにもかかわらず、作業を続けたため、有機溶剤による中毒を起してしまった。有機溶剤作業主任者がいながら保護具を使用しなかった点など元請・経営者による安全衛生教育の欠如を物語っている。
対策
1 塗装専門業者としての管理 | |
(1)有機溶剤作業主任者は職務について、作業方法の決定、保護具の使用状況等の措置を講ずることを徹底する。 (2)地下室における換気装置の設置について、送気・排気を考慮した装置とする。 (3)塗装作業者に有機溶剤の危険有害性について、特別な安全・衛生教育を実施する。 (4)呼吸用保護具については、電動式送気マスク又はエアラインマスクを用いる。 |
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2 元方事業者としての管理 | |
(1)元請は下請における塗装作業の方法や作業管理について、作業方法を理解し、連絡・調整を明確にする。 (2)安全施工サイクルの活動を徹底させる。 (3)注文者として、全体換気装置を使用させる時は、有機則第17条に規定する基準に適合するものを設置するよう指導する。 |