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労働災害事例

病院内で殺菌作業中に酸化エチレンガスを吸引

病院内で殺菌作業中に酸化エチレンガスを吸引
業種 病院
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 危険物、有害物等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100185

発生状況

 この災害は、病院内の殺菌乾燥薫蒸装置でベッドなどの殺菌作業中に、殺菌チャンバー内に残留していた酸化エチレンガスを吸入して中毒にかかったものである。
 災害が発生した日、午前7時頃に出勤した被災者は、前日から稼働させ処理の終えた殺菌乾燥薫蒸装置の殺菌チャンバー内の被消毒物を取り出し、次の被消毒物を殺菌チャンバー内へ収容し、殺菌チャンバーの扉を閉め、ガス供給バルブを開けて運転スイッチを入れた。運転スイッチの入れられた殺菌乾燥薫蒸装置は、前日にセットした殺菌工程8時間、残留ガス除去工程6時間の工程で自動運転が開始された。
 午後5時頃、被災者は次の被消毒物の殺菌作業を行うため消毒室に赴いた。その時、殺菌乾燥薫蒸装置は残留ガス除去工程に切り替わり1時間が経過したところであった。被災者は、残留ガス除去工程中に強制停止すると、通常よりも強制的に早く酸化エチレンガスが排出されると思い、操作盤を開け、作動中の排気制御用タイマースイッチを切った。排気用ファンが停止し、装置全体の運転が停止したので、被災者は、殺菌チャンバーの扉を開け、被消毒物の入れ替えを行っていたところ、残留していた酸化エチレンガスを吸入したものである。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 残留ガス除去工程に入って1時間経過したところで装置の運転を停止したため、殺菌チャンバー内に酸化エチレンガスが残留していたこと。
2 酸化エチレンガスが残留している殺菌チャンバーの扉を開けたため、殺菌チャンバー内に残留していた酸化エチレンガスを吸入したこと。
3 残留ガスを想定して保護具を使用していなかったこと。
4 自動運転中の装置を途中で止める操作について知識経験のない被災者が行ったこと。
5 チャンバー内に残留するガスを検知する設備が設けられていなかったこと。
6 装置の取り扱いについて操作者を指定すること。または殺菌作業に従事する者に対して操作マニュアルによる教育訓練が徹底して行われていなかった。

対策

 の災害は、病院内の殺菌乾燥薫蒸装置でベッドなどの殺菌作業中に、殺菌に使用していた酸化エチレンガスを吸入して中毒にかかったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 菌チャンバー内の残留ガスの有無を検知し、ガスが残留している時には扉が開かないような装置に改善すること。
2 化エチレンガスモニター用のセンサーは、作業域で検出される位置に増設すること。
3 毒室出入口に、消毒室内の酸素、炭酸ガスおよび酸化エチレンガス濃度の表示盤を設けることが望ましい。
4 置の操作マニュアルを整備すること。なお、異常時の措置について、処理方法、退避方法および退避訓練などをマニュアル化すること。
5 害物を取り扱う作業に対する、マニュアル類の整備、マニュアル類の順守状況の管理など責任の所在を明確にした管理体制を整備すること。
6 害物質の危険・有害性に関する知識を付与するとともに、その対策などマニュアル類に基づいた教育訓練を殺菌作業に従事する者に対して実施すること。