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労働災害事例

トリレンジイソシアネートを含有する塗料を用いて塗装作業中、近くで作業していた作業員が急性中毒にかかった

トリレンジイソシアネートを含有する塗料を用いて塗装作業中、近くで作業していた作業員が急性中毒にかかった
業種 プラスチック製品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100184

発生状況

 この災害は、工場内のコンクリート床を塗装する作業を行っていたところ、近くで作業していた作業員が塗料に含まれていたTDI(トリレンジイソシアネート)を吸引して急性中毒となったものである。
 災害が発生した日、被災者は同僚と二人で、第1工場内の北西部のコーナー部にある作業台で、粉砕されて袋詰めされた各種プラスチックを開け、仕様書により指示された配合を行い、袋詰めする作業を行っていた。また、この日の午後には、袋詰めの作業場所から約10m程離れたところで、コンクリート床(4m×5m)の塗装が行われることになっていた。
 災害が発生した日の午後になって、主剤の入った18リットル缶と着色剤の入った10リットル缶と、主剤と着色剤を混ぜ合わせるための容器(縦25cm×横35cm×高さ15cm)を現場に持ち込んだ。この容器に、2度塗りできる量として、主剤4リットルと着色剤2リットルを入れて混ぜ合わせ、1.5mの柄の付いたロールを用いて塗装を始めた。
 床に2度塗りが終わりかけた午後3時頃、同僚と2名で午前中に引き続き回収してきた袋詰めのプラスチックを開けて各種プラスチックの配合作業を行っていた被災者が、突然気分が悪くなり、休憩室で休憩していたところ呼吸困難となり、病院へ収容された。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 塗料は、キシレン、TDIなどを含有していたが、被災者の悪心に続く著明な呼吸困難の症状から、TDI中毒と推定される。
2 特定第2類物質であるTDI、第2種有機溶剤であるキシレンなどの有害物質を含有している塗料を取り扱う作業に、局所排気装置などの拡散を防止するための措置を講じていなかったこと。
3 塗装場所周辺での作業を中止しなかったこと。
4 有害物質に対応した保護具を着用せずに塗装場所周辺で作業が行われていた。
5 塗料の入った容器には、取り扱い上の警告や注意事項が記載されていたが、記載事項に沿った措置を取らずに作業をしていたこと。

対策

 この災害は、工場内のコンクリート床を塗装する作業を行っていたところ、近くで作業していた作業員が塗料に含まれていたTDIを吸引して急性中毒となったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 ウレタン系の塗料には、通常、硬化剤、有機溶剤など有害物質が含有されているので、必ず使用前に含有成分を確認し、必要な防護対策を講じること。
2 塗料の容器に貼られているラベルに記載されている警告文、取り扱い上の留意事項を必ず使用前に確認し、記載事項で不足する情報についてはメーカーまたは販売店にMSDSを請求するなどにより十分な情報を得ること。
3 臨時の作業であっても、全体換気を行い、保護具を着用させるなど有害物質に対する防護対策を講じる必要があること。
4 塗装作業を行う場合は、周辺作業を中止するなど有害物質に暴露されない措置を講じること。
5 原材料の有害性についてのチェック体制の構築、作業計画をの作成などの規程類の整備、資格を有する者のうちから作業主任者を選任するなど安全衛生管理体制の拡充を図ること。