農薬製造工場で排ガス処理装置に隣接した貯蔵タンクの清掃作業中、硫化水素中毒
業種 | その他の化学工業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100182
発生状況
この災害は、農薬製造工場において排ガス処理装置の排気口から出た高濃度の硫化水素を吸入して中毒となったものである。災害発生当日、被災者は、同僚と2名で農薬の中間製品の貯蔵タンクの清掃作業に従事していた。
この貯蔵タンクは、農薬を合成する反応工程中に副生する硫化水素などの排ガス用処理装置に隣接しており、その排気口は被災者がいた高所作業床付近に位置していた。
通常、この排ガス処理装置内では、酸化・還元反応をさせて排ガスを無害化するようになっているが、たまたま排ガス処理装置への中和剤の注入が止まるという事態が生じたため、高濃度の硫化水素ガスが排気口から排出された。
タンクからの排出物を搬出する作業を被災者と行っていた同僚が、被災者の応答がなくなったことに気付き、周りを見渡したところ、意識を失って作業床に倒れているのを発見した。
救出後、被災者は1時間以内に意識が回復したが、急性硫化水素中毒のため入院治療を受けるに至った。
なお、作業中、両名は、防毒マスクなどの保護具は着用していなかった。
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。1 大量の硫化水素等が排ガス用処理施設の排気口から排出されたこと
2 換気装置の能力が不十分であったこと
3 作業環境の測定を実施しないで作業を行わせたこと
4 安全衛生教育が不足していたこと
5 作業管理を行っていなかったこと
対策
この災害は、農薬製造工場において排ガス処理装置の排気口からでた高濃度の硫化水素を吸入して中毒となったものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 ガス処理装置の中和剤の噴出量の適否について、定期的に点検し、設備の自主検査を行うこと。 2 ガス処理装置の排気口は工場建屋の屋外に移設すること。 3 止タンクの清掃を行わせる場合には、次の措置を講じること。 |
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(1)硫化水素などの有害ガスに関する作業環境測定を実施して、事前に有害性の確認を行う。 (2)硫化水素などの有害ガスの作業環境中の濃度が特に高い時は、隣接作業場における反応工程の各装置の稼動を停止する。 |
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4 作業マニュアルを定め関係者に徹底すること 5 安全衛生教育を十分に行うこと 6 安全衛生管理体制を整備し、活動の活性化を図ること |