地熱発電所の油分離槽の点検中に硫化水素中毒
業種 | その他の事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100180
発生状況
この災害は、地熱発電所内の油分離槽室内で発生したものである。地熱発電所では、蒸気井から取り出した蒸気は気水分離器により水と二酸化炭素、硫化水素を含む蒸気等に分けられ、蒸気等はタービンに送られ、その後二酸化炭素等を含んだ気体は大気に放出される。
大気に放出するために真空ポンプを使用するが、ポンプには潤滑剤、シール剤として大量の潤滑油を使用しているため、排出ガスに油が混じるので、排気管の途中のドレンタンクで分離し、排ガスは大気に放出し、油分及び水分は油分離槽に送って分離している。
被災者は、日常この分離槽の油かき取り作業等に従事しており、災害発生当日も昼食の後、午後2時頃より一人で油分離槽での作業を開始した。
午後4時すぎ、他の会社の作業者が、油分離槽の昇降用はしごの下でうずくまっている被災者を発見し、声をかけたが応答がないのですぐに同僚に連絡するとともに、救急車を呼び病院に運んだが既に死亡していた。
病院で被災者の調査をしたところ、肺、大腿筋、脳、心臓、肝臓、血液から硫化物が検出され、硫化水素中毒と判断された。
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。1 硫化水素ガスが油分離槽室に滞留していたこと
2 油分離槽室の換気が不十分であったこと
3 空気呼吸器等を使用しなかったこと
4 安全衛生教育が不十分であったこと
対策
この災害は、地熱発電所内の油分離槽室内で発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 大気にガスを放出する排気管の構造等を改善すること
2 ドレンタンクの構造等を改善すること
3 油分離槽室に警報装置の設置等を行うこと
4 作業マニュアル等を見直し周知すること
5 安全衛生教育を十分に行うこと
6 総合的な安全衛生管理を行うこと