船倉での木材燻蒸終了後のハッチ等の開放作業中に酸素欠乏症で死亡
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他保護具を指定していない | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具の選択、使用方法の誤り |
No.100176
発生状況
この災害は、船内において木材の燻蒸を終了したので、ハッチを開放して中の燻蒸ガスを排出する作業中に発生したものである。災害発生当日の午前11時15分、前日に燻蒸が行われた船倉について防疫官立ち会いのもとにガス濃度測定が行われ、その結果燻蒸の効果が確認されたので、作業主任者である被災者の指揮のもとに作業者2名と船の保安要員3名で各船倉のハッチ等の開放作業が開始された。
作業者2名は、被災者の指示で船首側に回り第1船倉から順次第4船倉の昇降口のハッチの開放等を行ない、被災者は3名の船員と一緒に右舷に回り、船倉ハッチの開閉を船員に操作させて自分は船員の監視を行なっていた。
作業者2名は、最後の第4船倉のハッチを開放し、被災者と作業をしていた開放要員の船員3名も戻ってきたので彼らを安全な場所に移動させ、ブリッジの控室に戻った。
その時に被災者の姿はなく、開放作業が終了したので最後の確認に回っていると思っていたが、帰りがあまり遅いので、午前11時50分頃船内を探してみたが見当たらなかった。そこで、燻蒸作業の終了を会社の詰所に報告に行ったのではないかと考えて行ってみたが、見当たらず不審に思った支社長以下で船に戻り手分けして探してみたところ、甲板上でハッチが開いたままの昇降口があるのが発見されたので、そこから下をのぞくと被災者が防毒マスクを付けたまま仰向けに倒れていた。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 船倉内は酸素欠乏危険場所であるにもかかわらず、立ち入る前に酸素濃度を測定しなかったこと
2 換気を行わなかったこと
3 酸素欠乏危険場所に有効な空気呼吸器等を着用していなかったこと
4 燻蒸作業、及び燻蒸作業終了後のハッチ等の開放作業は、慣れた作業ではあるが、燻蒸を行う船の構造はそれぞれ特徴があり、作業に先立ってこれら船の構造等を詳細に調査した上で作業の手順を明確に定めるべきであったのに、それがなされていなかったこと
5 燻蒸作業は極めて有害な作業であり、作業に必要な機材、保護具の準備等については、かなり入念に行われていたが、船倉内等の作業の危険有害性等についての特別教育等が十分ではなかったこと
対策
この災害は、船内において木材の燻蒸を終了したので、ハッチを開放して中の燻蒸ガスを排出する作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策が必要である。1 燻蒸作業後に作業者を立ち入らせる場合には、臭化メチル及び酸素濃度の測定を行うこと
2 燻蒸作業の開始前には、船の構造、材質及び酸化の状況等を詳細に点検し、その結果に基づく作業手順を明確に定め徹底すること
3 危険有害場所に対応して使用する呼吸用保護具の指定を行うこと
4 原則として複数で作業を行うこととし、作業主任者は作業者の指揮、監視に専念すること
5 作業者に安全衛生教育を十分に行うこと、また、救助についても教育訓練を実施しておくこと