換気口内地下ピットに溜まった雨水を内燃機関付ポンプで廃水作業中、一酸化炭素中毒
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 原動機 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100169
発生状況
この災害は、ピットに溜まった雨水の排水作業中に、使用したガソリンエンジン付ポンプの排気ガスにより一酸化炭素中毒が発生したものである。当日の作業は、ドライエリアと呼ばれる地下換気口内のピットに溜まっていた雨水をガソリンエンジン付ポンプで屋外に排水するものであった。このドライエリアは、開口部は縦約5m、横約2m、深さ約9.5m、地下約4.5mのところに平らな中段があり、その下に更に開口部縦約0.6m横約0.9mの入口を持った最下層の空洞部分、いわゆるピットにつながっている。
Aは同僚と二人で、午前8時半頃からドライエリア内の型枠片付け及びピット内の雨水の排水作業を行うこととなった。まず、雨水を排水するためドライエリア内に持ち込まれていたガソリンエンジン付ポンプで作業を開始した。ところが、雨水が思ったよりも多いため、もう一台をピット内に持ち込んで作業を行うことになり、同僚を他のベテラン作業員Bと交代させて、AとBは10時半に作業を開始した。
その後、昼食時になっても2人が事務所に戻らないため、同僚のCがドライエリア内を探したところA及びBは、深さ約9.5mの最下層ピットで倒れていた。そこでCは、近くにいた作業員に声をかけ、7人で救出作業を行ったが、次々と全員が具合が悪くなった。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 ドライエリア内が十分な広さでないにもかかわらず、作業能率だけを考えて排水ポンプを一台から二台に増設して作業を行ったこと
2 非常に狭いピット内に、ガソリンエンジン付ポンプを持ち込んで作業を行ったこと
3 換気装置を設置するなどピット内の換気をしないで、ガソリンエンジン付ポンプを使用したこと
4 作業開始前に、酸素濃度測定が行われていなかったこと
5 作業者に対して、当日の作業を考えた安全教育が実施されていなかったこと
6 救助方法等に対する対策が、全く行われていなかったこと
7 朝礼がマンネリ化していて、十分な危険予知が行われていなかったこと
8 作業方法の変更についての指示系統が、はっきりしていなかったこと
9 作業員の交替を行ったにもかかわらず、この作業員に対して安全作業について指示を行っていなかったこと
対策
この災害は、新築工事現場内の換気口内ピットの排水作業中、使用したガソリンエンジン付ポンプによる一酸化炭素中毒により災害が発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 自然換気が不十分な場所においては、ガソリンエンジン付ポンプを使用せず、電気による水中ポンプを使用すること。
2 ガソリンエンジン付ポンプはレンタルであったが、作業方法を検討してポンプの種類を選定すること。
ガソリンエンジン付ポンプは、自吹式エンジンポンプ(最大揚程34m、最大揚水量550l/min、所要動力3.5ps/3600rpm)であった。
3 やむを得ず、内燃機関付ポンプを使用する場合は、送風機等により内部の換気を十分行うこと。
4 作業指示は、事前に作業計画を立て、具体的な作業指示をすること。
5 作業者に対する安全衛生教育を実施し、作業における危険認識・安全意識の高揚を図ること。
6 作業員の判断で作業方法を変更する場合は、届出を行わせること。
7 ピット内等狭い場所は、酸素濃度測定など酸素欠乏症対策を行うこと。