シリコン表面に膜を形成する装置の排気ダクト内に堆積した副生成物除去作業中に爆発
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 爆発性の物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100167
発生状況
この災害は、シリコン表面に膜を形成させる装置の排気ダクト内に堆積した副生成物除去作業で爆発が発生したものである。災害発生当日の午後1時から発注者とメンテナンス会社が午後の作業の打合せを行い、1時30分から次の手順で作業を行うことになった。
[1]反応装置内に流しているモノシランガスの代わりに窒素ガスを流す→[2]吸引バルブを開きスクラバーまで気体が通じるようにする→[3]モノシランガスをヒーターで燃焼させて大気に出す→[4]除害装置のヒーターをストップする→[5]除害装置に通じるバルブを閉め、同時に除害装置をバイパスする排気ダクトのバルブを開く→[6]排気ダクトにあるフランジの蓋を開放し、そこから入って来た空気で排気ダクト中の堆積副生成物をスクラバーまで飛ばす→[7]副生成物が飛ばされたことを確認した後に、フランジの蓋を取り付ける。
午後2時にメンテナンス会社の作業員が、屋上の除害装置のところへ行き、[5]の作業を始めたが、その前に[6]の作業のため待機している被災者に「これから準備に入る」とトランシーバーで伝えた。
午後2時5分に、除害装置内の気圧が異常値となったために圧力アラームが鳴ったが、メンテナンス会社の作業員は工程[5]の作業を続行していたところ、午後2時10分頃に爆発が発生し、フランジの前で待機していた被災者は、排気ダクトからの爆風をもろに受けて吹き飛ばされ、頭部を打ったため死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 排気ダクト内に可燃性の物質が堆積していたこと
排気ダクトに堆積していた副生成物は、発生メカニズムが必ずしも明確ではないものの、半導体塗膜装置メーカーの情報や堆積物の分析結果によれば、可燃性で、また、水と反応し水素ガスを発生するものであったこと
2 ヒーターが稼動していて水素ガスが発火したこと
除害装置では、モノシランと副生成物を水のシャワーで落としてからヒーターでモノシランを燃焼させているが、災害発生時点でもこの状態が継続されていたこと
そのため、副生成物がシャワーの水と反応して水素ガスが発生し、大気中の酸素、ヒーターの熱により小規模の燃焼が生じた。
3 副生成物の危険性についての情報を周知していなかったこと
半導体塗膜装置メーカーがユーザーに配布した文書の中では「堆積物は通常使用される圧力(10torr:圧力の単位で1気圧は760torr)以下では激しく反応しません」と記載されていたので、これを読んだ者が上司への報告等は行っていなかったこと
4 除害装置内の気圧の異常を知らせるアラームが鳴ったにもかかわらず、作業を継続したこと
5 作業手順が明確に指示されていなかったこと
対策
この災害は、半導体塗膜装置の排気ダクト内に堆積した副生成物除去作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 副生成物の危険有害性を調査すること
副生成物等の危険有害性等についての情報公開が十分ではないが、作業に先立ってメーカー等から情報を入手すること。
2 設備等の改善を行うこと
末端のフランジから入れた大気を屋上の除害装置まで運ぶダクトについて、口径を出来るだけ小さくして流速を高め、また、出来るだけ直線的に配置し、全長を短くするとともに、生成物を吹き飛ばす方法を変更する等の検討を行うこと。
3 作業計画の作成と周知を行うこと
慣れている定期作業であっても、事前に状況を確認し、作業計画を作成のうえ、関係業者及びその労働者に周知すること。
4 作業手順を定め、的確な作業を実施すること引火性・可燃性の物質を取り扱う作業に ついては、把握した情報に基づいて安全な作業手順を定めること。
5 安全衛生教育を徹底すること
物質の危険有害性は勿論のこと、系統全体と各々の機能、異常が発生した場合の措置等について十分な教育を実施すること。