自動車部品の金属表面の処理炉で爆発
業種 | 自動車・同付属品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100136
発生状況
この災害は、自動車製造工場において、部品の金属表面に炭素を浸炭させるための連続炉で発生したものである。工程としては、連続炉のガスの中で鋼板を900℃前後に加熱して鋼板表面に炭素を浸炭させ、さらに鋼板の熱処理を行い浸炭層を硬化させることになっている。
災害が発生した炉は、前年の12月に15日間の定期点検が修了した後連続運転に入っていたが、年末年始の休みのため、12月30日に炉を全停止した。しかし、災害発生日となった1月7日に、翌日の操業開始時間には炉内温度を規定の温度に上昇させておく必要があったことから一部の作業員が出勤した。8号炉の担当となった被災者A、Bは、午前8時45分頃より点火トーチにより順次点火して行き、27本のうち25番までの点火が終わり、26番と27番バーナーを点火しようとしたところガスの匂いがしたので一旦停止し、換気の後点火したところ、「ドスン」という大きな音がして炉の出口側ドアから火炎と熱風が吹き出した。このため、点火を担当していた被災者A、Bは、両上肢、右下肢、顔面等に2度から3度の熱傷を受けた。
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。1 炉内に可燃性ガスが残留していたこと
爆発の要因としては、年末年始の休みに備え浸炭用連続炉を全停止する前に置換のために送気した窒素ガスの中に管理範囲を超える可燃性ガスが含まれていた。
2 残留ガスの排出を行わなかったこと
標準作業書では、点火前に炉の挿入ドア及び排出ドアを開放し、残留ガスを排出することになっていたが、これを実施していなかった。
3 作業者に対する安全教育等が不十分であったこと
この工場では、炉の点火、炉の温度の降下、ガス置換等についての標準作業書が作成され、ほぼ定期に見直しも行われていたが、その内容が関係作業者に徹底されてはいなかった。
対策
この災害は、自動車製造工場の金属表面に炭素を浸炭させるための連続炉で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 可燃性ガス成分の低い置換用ガスの採用について検討すること。
2 炉の排出口のドアの機構について再検討するとともに、降下防止のための治具の使用等を検討すること。
3 作業標準書には、バルブ、コック等の開閉手順、ガスの調節等のほか作業開始前の点検確認、災害防止のポイント等について記載するよう全面的な見直しを行うこと。
4 作業員にガス等の危険有害性について基礎的な教育を行うとともに、改定した標準作業書の内容について徹底した教育を行うこと。
5 監督者の任務について再教育を行うこと。