銅連続鋳造機の運転中、冷却水が水蒸気爆発を起こした
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の一般動力機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 構成材料の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 確認しないで次の動作をする |
No.100133
発生状況
この災害は、銅の連続鋳造機の運転作業中に、モールド下方から引き出されるビレット状の銅魂にかけられた冷却水が水蒸気爆発を起こしたものである。災害が発生した日、班長以下6名の作業員が連続鋳造機の運転業務に就いていた。
連続鋳造機の運転業務は、班長が定めた勤務割表に従って班長以下6名の作業員により、自動運転されている連続鋳造機の監視業務を連続鋳造機運転監視室で1時間ごとに交替で行い、連続鋳造機の監視業務に就いていない作業員は他の業務に就いていた。
被災者は、製品取り出しなどの業務を午前3時まで行い、その後2時間ほど仮眠を取り、午前5時に連続鋳造機の監視の業務に就いた。監視の業務に就いて間もなく、モールド上方の湯面に異常を認めたため、自動運転を解除して手動運転に切り替えた。そして、溶融銅のモールドへの供給量を調整するディストリビューターの調整弁の開閉を遠隔操作により繰り返し行い異常事態の解消を試みたが、異常事態は依然として解消されなかった。そこで、この調整弁を全閉にしたところ水蒸気爆発が発生した。
この水蒸気爆発により、モールド内の溶融銅が一瞬にして大音響とともに飛散し、連続鋳造機運転操作室のガラス窓が爆風により損壊し、連続鋳造機運転監視室にいた被災者に当たったものである。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 モールド内壁面にザラつきがあったこと、溶融炉で溶融されたスクラップ銅に鉄その他の金属が含有されていたため溶融銅の粘性が高くなったことなどにより「ずり上がり現象」が発生し、モールド下部から完全に凝固していない溶融銅が引き出され、これに直接冷却水が噴射されたこと
2 溶融銅の湯面上昇が「ずり上がり現象」によるものであることを見逃し、テレビカメラの汚れまたは振れなどによる検出エラーと思い込み、手動運転に切り替えて溶融銅の供給を継続したため、完全に凝固しないままビレットが引き出されてしまったものと推定される
3 湯面を検出するテレビカメラの点検整備が不十分であったため、「ずり上がり現象」による湯面上昇をテレビカメラの汚れや振れによるものと誤判断したこと
4 異常時の措置に関するきめ細かいマニュアルの整備が十分でなかったこと
対策
この災害は、銅の連続鋳造機のモールド下方から引き出されるビレットに掛けられた冷却水が水蒸気爆発を起こしたものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 「ずり上がり現象」に対して、フェールセーフ機能を有する制御機構を確立すること。
2 モールド内を通過する溶融銅が、冷却水に直接触れない構造にするなど水蒸気爆発の生じる恐れのないものとすること。
3 運転監視室は想定できる危険から回避できる強度を有する構造に改善すること。
4 設備の点検リストを作成し定期的な点検整備を実施すること。
5 連続鋳造機の手動運転、自動運転および異常時の措置に関するマニュアル類を整備すること。
6 責任体制と役割分担を明確化し、潜在する危険要因の評価が適切に実施される仕組みを構築すること。
7 水蒸気爆発その他の危険およびその対策についての安全教育を実施すること。