水素製造プラントの定期修理作業中、水素ガスが爆発

業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 周縁的動作 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100128
発生状況
この災害は、定期修理が行われている水素製造プラントで、水素リッチガスを精製する溶液を予備タンクに抜き出す作業中、予備タンク内で水素ガスが爆発したものである。災害が発生した前日から、水素製造プラントは、定期修理のためプラント内のそれぞれの装置を順次縁切りし、吸収塔および分離塔内にある溶液と水素ガスが、吸収塔と分離塔の間をポンプアップにより循環されていた。
災害が発生した日、夜勤班から引き継いだ昼勤班は、吸収塔および分離塔内を循環している溶液を、分離塔から吸収塔へ溶液を戻す配管途中から分岐されている配管を通じて、予備タンクへ抜き出す作業を始めた。
溶液を抜き出す準備を終え抜き出しが開始されてから、しばらくして、循環ポンプにキャビテーションが発生していることに気付き、分離塔から吸収塔へ溶液を戻す配管途中にあるバルブを絞った。それから15分後に、予備タンク内で爆発が発生し、予備タンクの屋根が吹き飛んだ。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 水素ガスが炭酸カリ溶液とともに予備タンク内に送り込まれ、タンク内空気と相まって爆発範囲内の混合ガスを形成していたこと
2 水素ガスが高圧で予備タンク内に流入したことにより静電気が発生し、水素ガスとタンク内空気との混合ガスに着火して爆発したものと推定される。
3 水素ガスが流入する予備タンクの、水素爆発の危険に対する措置が十分でなかったこと
4 ポンプにキャビテーションが発生したため、水素ガスが予備タンクに予想以上の量が流入したこと
5 水素ガスを取り扱う危険に対処するプラント操作のためのマニュアルが不十分であったこと
6 定期修理時における作業の安全を確保するための事前の検討が十分に行われていなかったこと
対策
この災害は、定期修理が行われている水素製造プラントで、水素リッチガスを精製する吸収塔および分離塔内の溶液を予備タンクに抜き出す作業中、予備タンク内で水素ガスが爆発したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 水素ガスを安全な方法により放出してから溶液の抜き出しを行うこと。
2 タンクの構造、爆発戸などの安全措置、静電気対策などの設備的改善を行うこと。
3 定期修理に当たっては、作業の安全を確保するため、ポンプのキャビテーション防止、流量調整のためのバルブ操作などその物質から生ずる危険を防止する手順としたマニュアルを整備すること。異常時の措置についてのマニュアルを整備すること。
4 作業の安全を確保するための設備の安全化、プラント操作マニュアルの整備などの組織的なクロスチェックが行われるなど万全が期せられるように、役割分担およびその責任の明確化を図ること。
5水素ガスの危険性およびその対策についての安全教育を実施すること。また、マニュアル類の見直し改訂の都度、その周知徹底を図るための教育を実施すること。