取鍋から鋳型へ溶湯を注入する作業の段取り中溶湯が噴出して全身火傷
業種 | その他の鉄鋼業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の炉窯等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他防護物をなくする |
No.100120
発生状況
この災害は、鋳造品の鋳込みのため取鍋を鋳型の上に移動し、注湯ノズルの調整中に取鍋の中の溶湯が突然噴出したものである。当日の午前8時、電気炉から取鍋に移されて脱ガス工程が終了した溶湯について、まず取鍋内を真空にするために被せてあった蓋を一人の作業者が取り外し、被災者Bはバブリングのために取り付けてあったアルゴンガスホースを外した後、被覆剤を取鍋に投入して取鍋をクレーンで吊って鋳込み場所の方に移動した。
被災者AとBは、他の作業者と3名でクレーンの運転者と連携しながら取鍋を台車の正しい位置にセットする作業を行ない、取鍋が台車に降ろされた後、チェーンブロックを利用して取鍋の下部にスライディング・ノズル稼動用の油圧シリンダーを取り付けた。
次いで、被災者AとB及び他の作業者一名は、スライディング・ノズルの位置検出用のワイヤーの装着作業を開始した。
作業の内容は、取鍋側のワイヤーとセンサー側のワイヤーをターンバックルで接続し、「遊び」が無いように張るもので、被災者Bが、ワイヤーが2か所のガイドを正しく通っていることを確認し立ち上がったときに取鍋から溶湯が吹き出し、被災者Aは全身に溶湯を浴びて死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 取鍋の受け煉瓦等から溶出したタール(約200℃で気化しはじめ、700℃で80%以上が気化するとされている)が気化し滞留しているところに、ホース内に約4気圧の残留ガスが含まれたアルゴンガスホースが接続されたため、取鍋内の溶湯が押し出され噴出したこと
2 被災者は、防火保護衣を着用していなかったこと
3 安全衛生教育が十分に行われていなかったこと
対策
この災害は、鋳造品の鋳込みのため取鍋を鋳型の上に移動し、注湯ノズルの調整中に取鍋の中の溶湯が突然噴出したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策が必要である。1 受け煉瓦、スライディング・ノズルの材質等を再検討すること
2 スライディング・ノズルの位置決め方法を改善すること
3 安全衛生教育を徹底すること
4 作業管理を十分に行うこと
5 保護具の使用等を徹底すること