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労働災害事例

農道開設工事で杉の枝払い作業のため「はしご」を移動中に墜落

農道開設工事で杉の枝払い作業のため「はしご」を移動中に墜落
業種 道路建設工事業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) はしご等
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
建設業のみ 工事の種類 道路建設工事
災害の種類 はしごから墜落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 安全帯を備え付けていない
発生要因(人) 忘却
発生要因(管理) 所定のものを不安全なものに取りかえる

No.100026

発生状況

 この災害は農道整備工事の準備工事において、杉の立木にかけたはしごの上で安全帯をその杉の幹に回し掛けし、チェンソーを使用して枝払いを行った後、切り残した下方の枝を切るため、安全帯を外し、下へ移動中、墜落した災害である。
 午前10時頃には4人の作業員全員が全ての立木の伐採を終わり、各自の作業場所で休憩をとっていた。被害者は枝払いの作業を再開し、立木にかけた「はしご」の上で、安全帯で身体を支えてチェンソーで作業していた。午前10時15分頃、作業員の一人が作業を再開する前に、枝払いの終わっていない立木を数えていると、被害者が作業している立木からチェンソーが落ちてくるのが見えた。その作業員はそのまま枝払いの終わっていない立木を数え終えて被害者の作業していた立木の近くに来たとき、その立木の根元に被害者が倒れているのを発見した。
 被害者は下方3本の枝を残し、はしごの最上部まで登り、手の届く上方の枝払いを安全帯を使用してチェンソーによる切断作業を行っていた。次いで下方の枝を払うため安全帯を外し、片手にチェンソーを持って下方に移動する際に、はしごのステップが左右交互になる部分に至ったとき、身体の安定を失い、墜落したものと推測される。
 昇降に使用した「はしご」はアルミ製で、その最下部に土突き(地面に最大の深さ15cmに突き刺すことにより、はしごを安定させる部材)が、最上部には上部抱金具(緩衝ゴムの付いた昇降時の横転を防止する)が設けられている。
「はしご」の支柱は幅4cm、厚さ6cmで、そのに最下部のステップから30cm間隔に左右交互に長さ10cmのステップが設けられ、上部抱金具の下方二段のステップは左右に設けられているものであったが、支点が2箇所であり、地山の勾配、軟弱等によって通常の昇降にあたり一般の「はしご」と異なり、右に体重がかかると右に傾き、左に体重がかかると左に傾く等安定したとは言えない状態にあった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 安全帯のみの墜落防止対策であったことから移動に際して安全帯を外さなければ下方に移動できないため外したものである
2 安定した状態ではない「はしご」を使って移動する際に、安全帯のみでなく補助ロープの使用、補助ロープ付き安全帯(二丁掛け安全帯)の使用、ロリップの使用等をすべきであったが、安全帯しか着用していなかったためこれらが行われなかったこと
3 重量が4.1kgとかなり重いチェンソーを片手で持ったまま、安定に欠ける「はしご」を降りようとしたこと
4 指示に反し、枝払いの作業に重量のあるチェンソーを使用したこと
5 枝払いの作業が不慣れであったこと
被災者aは伐採作業の経験は長いが、立木の枝払い作業は初めてであり、不慣れであった。

対策

 この災害は農道整備工事の準備工事において、杉の立木にかけたはしごの上で安全帯をその杉の幹に回し掛けし、チェーンソーを使用して枝払いを行ってた後、切り残した下方の枝を切るため、安全帯を外し、下へ移動中、墜落した災害であるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 昇降に使用する「はしご」は、安定した「はしご」を使用すること。
 昇降に際しては、両手を使って安定した状態で行うこと。
2 「はしご」を使って昇降等移動するに際し、安全帯の着用のみでなく補助ロープの使用、補助ロープ付き安全帯(二丁掛け安全帯)の使用、ロリップの使用等を行うこと。
3 高所でチェーンソー等重量のある工具等の使用は避けること。
やむを得ずチェーンソー等を使用する時は、持ち上げ、取り下ろしにロープを使用するとともに、使用に際しては落下防止のためロープ等で支持物に取り付けること。
4 立木の枝払い作業についての作業手順書を定め、関係作業員に教育、訓練を行う等周知徹底をはかること。
5 作業中の作業員の不安全行動等の監督、指導が行える体制を確立すること。
6 立木の枝払いに教育、訓練を受けていない不慣れな作業員をつかせないこと。