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労働災害事例

「ニラ」栽培用ビニールハウス内で臭化メチル中毒

「ニラ」栽培用ビニールハウス内で臭化メチル中毒
業種 農業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) その他保護具を指定していない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.1121

発生状況

この災害は、「ニラ」栽培用のビニールハウスを耕す作業中に発生したものである。
 J町の農業協同組合は、「ニラ」を栽培している農家からビニールハウスの深耕作業を請け負った。
 深耕作業が終了したところで、畑の所有者が臭化メチル燻蒸剤を使用してビニールハウス内の土の消毒を行なった。
 しかし、畑の耕し方が不均一であったことから、再度深耕作業を行なうことを組合に要請し、災害発生当日、前と同じ運転者(被災者)が赴き、作業を開始した。
 当日の午前中に2棟分の深耕作業が終了したが、畑の所有者の妻がお茶を出しに行ったとき、被災者は「気分が悪い」と言っていた。
 午後の作業は、午後2時30分より約1時間ほどで終わり、被災者は農業協同組合に帰った。
 この時、被災者は、農業協同組合の女子事務員に「吐き気がする、前が暗く見える、頭が痛い」と話していた。
 その翌日、被災者は、自ら病院に行き、医師の診断を受けたところ、「臭化メチル中毒症」と診断され、そのまま入院、加療した。

原因

この災害は、「ニラ」栽培用のビニールハウス内の土壌を耕す作業中に発生した中毒であるが、災害原因としては次のようなことが考えられる。
 中毒の原因として考えられるのは、農業協同組合に深耕作業を依頼した「ニラ」栽培農家が土壌の消毒に用いた臭化メチル燻蒸剤である。
 この臭化メチル燻蒸剤の入っている缶には、使用上の注意事項がかなり詳細に記載されていたが、人体に体する危険有害性については記載が無かった。
 被災者は、自ら臭化メチル燻蒸作業を行なうことはなく、当日、燻蒸の状況を的確に把握しないまま作業を行なったことが中毒につながったと考えられる。
 特に、臭化メチル燻蒸缶には、燻蒸作業後、被覆シートを外し3〜4日間ガス抜きを行なってから土壌を拡げ、又は切り返してさらにガス抜きを行なってから次の作業に取りかかるよう記載されているのに、被覆シートを外した翌日にトラクターを持ち込んで作業を行なった。

対策

この災害は、「ニラ」の栽培農家のビニールハウス内において、土壌を耕す作業中に発生した中毒であるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業環境の事前調査
 事前に委託者と使用した薬品等、使用した時期等について打ち合わせる。
2 安全衛生管理体制の整備
 安全管理体制の整備を行ない、計画的な活動を推進する。
3 作業計画書の作成
 事前の調査結果を踏まえ、作業計画書を作成する。
4 安全衛生教育の徹底
 具体的な災害事例等を含めて十分な安全衛生教育を行なう。
5 作業場所の巡視、指導
 管理者は、随時作業場所を巡回し、指示した作業内容の確認と指導を行なう。
6 作業マニュアルの策定
 危険、有害な作業については、作業マニュアルを策定し、関係の職員に教育訓練を行なう。