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労働災害事例

中古タンクの改造作業中、タンク内で有機溶剤中毒

中古タンクの改造作業中、タンク内で有機溶剤中毒
業種 産業廃棄物処理業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) その他保護具を指定していない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.1119

発生状況

この災害は、廃棄物処理を行なう事業場において、トルエン等の保管に使用していたと思われる中古タンクを酸・アルカリ用タンクに改造する作業中に発生したものである。
 当日の作業内容は、タンクの下方にあるフランジの気密性が低下していたため、フランジ板を取替える作業で2名の作業員が担当した。
 タンク内での作業は、まず、縄ハシゴと命綱用ロープをタンクの外側上部に固定し、2名が交互に中に入って取替え用のフランジ板の寸法合わせを行なったが合わなかった。
 そこで、主作業員は補助者である被害者に「作業再開までフランジ板取付部の外部からの清掃」を指示し、現場を離れた。
 しばらくして、主作業員が現場に戻り、タンク内で倒れている被害者を発見、タンクを横倒しにしたうえ、タンクの上部を切断して救出したが、すでに死亡していた。

原因

この災害は、中古タンクを酸・アルカリ用タンクに改造する作業中に発生したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。
 この災害の直接の原因は、タンク内に残っていた有機溶剤のスラッジが、タンク内で作業者が動いている間に撹拌された状態になり、有機溶剤が気化・充満してきて、タンク内に入った作業員がそれを吸入し中毒死したものと推定される。
 間接的な原因としては、次のようなことがあげられる。
[1] 中古タンクを購入した際、それまでに使用していたときの内容物を確認していなかったこと。
[2] 酸欠についての濃度測定は行なったが、有機溶剤濃度は測定していなかったこと。
[3] 作業開始前に換気をせず、また、呼吸用保護具も使用していなかったこと。
[4] タンク内作業であるのに監視人を置かず、単独作業を行わせたこと。
[5] タンク内作業の危険有害性について、作業者に認識がなく、また、その教育も受けていなかったこと。

対策

この災害は、有機溶剤を入れたことのある中古タンクの改造作業中に、中に残存していた有機溶剤を含むスラッジから有機溶剤成分がタンク内に充満したことによるものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策を徹底する必要がある。
[1] タンク内作業の前に、有機溶剤等がタンク内にあるか否かを確認し、濃度測定をすること。また、スラッジなどの残留物や付属物などは、あらかじめ除去しておくこと。
[2] 作業中、一定時間ごとに、酸素濃度測定と併せて有機溶剤濃度を測定すること。
[3] 墜落転落等の対策と併せて、タンク内濃度測定の結果に対応した有機溶剤用呼吸用保護具やホースマスクを着用させること。
[4] 作業者に、タンク内作業の危険有害性の教育を行なうこと。
[5] タンク内作業についての作業手順を定めること。