タイ人経営レストランで自ら「じゅうたん」張付け作業中に火災
業種 | その他の小売業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1114
発生状況
この災害は、タイ人が経営するレストランにおいて、店内の模様替えのため、床の「じゅうたん」を経営者が従業員とともに張っている作業中に発生したものである。災害発生当日、店の経営者であり、また、店長でもあるタイ人Aは、当日に自分の妻と一緒に近くのホームセンターで購入してきた「じゅうたん」を開店までの空き時間を利用してウエイターであるBとともに張る作業を開始した。
作業は、一人が床面を掃除し、もう一人が「はけ」で接着剤を床と「じゅうたん」の裏側に塗布し接着させるもので、午後7時頃より作業を開始し、1時間程経過したときに「じゅうたん」を張り付けていた箇所付近から一気に火の手が上がり、たちまち店内に広がり店は全焼した。
そのため、経営者のAは、全身火傷でほとんど即死の状態で死亡し、また、経営者と作業を行っていたウエイターBは病院に運ばれて一週間後に死亡、さらに店内の厨房で開店に備えて食器洗いをしていたタイの女性Cが火傷で重体、同じく厨房で野菜切り等調理の準備をしていたコックのタイ人Dが自力で脱出したものの重度の火傷を負った。
原因
この災害は、死亡した2名を含む全ての被害者(内一名は、経営者)が、外国人という悲惨なものであり、被害は火災による火傷ショックまたは重度の火傷であった。その直接の原因は、「じゅうたん」を張り付けるために使用した接着剤の主成分が引火性の有機溶剤であったため、作業中に有機溶剤が店内に充満し、何らかの原因で引火し、火災が発生し全焼となったものと考えられる。
また、災害が発生した時期は、日本においては厳寒期にあたり、窓を開放して作業を行う環境下になかったことが店内の引火炎上の雰囲気づくりに作用したものと考えられる。
引火の原因となったものは、店の開店前の少ない時間を利用しての作業であったため、乾燥の目的で燃焼させていた石油ストーブ2台の火が第一と考えられるが、停止していたと言われる換気扇のほか古い冷蔵庫等のスパーク等も原因になると考えられる。
しかし、最大の原因は、接着剤の成分等について十分な知識もなく、日本語の読解力もない外国人が、専門の業者に依頼せず、自らホームセンターで購入してきた接着剤を用いて「じゅうたん」の張り付け作業を実施したことにあると考える。
対策
この災害は、レストランの経営者が、「じゅうたん」の床への張り付けのためホームセンターから購入してきて、使用した接着剤に含有されていたトルエン、ノルマルヘキサン等の有機溶剤が作業中に密閉された店内に充満し、灯油ストーブの火で引火し、炎上したものと想定されるが、同種災害の再発防止のためには、次のような措置の徹底が必要である。1 換気の徹底
引火性の有機溶剤を含有する接着剤等を室内で使用する場合には、換気の措置を十分に行なうこと。
2 危険・有害性の表示と確認
接着剤等の購入に際しては、危険有害性の表示の確認を行い、取扱上の注意事項に従って使用すること。
3 火気の厳禁
点火源となる灯油ストーブ等火気の使用は絶対にしないこと。
4 避難訓練等
災害発生の時自宅にいた日本人は、防火管理者の講習も修了していたが特別に避難訓練も実施していなかった。
万一に備えての消火訓練、避難訓練は定期的に行っておく必要がある。