ガス管の取替工事中、大量に漏れ出したプロパンガスで酸素欠乏症
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.1108
発生状況
この災害は、住宅地において、集中配管方式で各家庭にプロパンガスを供給していたガス管からガス漏れがあり、そのガス漏れ個所の修理のため、道路に作業坑を掘って作業を行っていた2人の作業員が、作業坑内に溜まっていたプロパンガスのために相次いで酸素欠乏状態となり意識を失った。救助された2人は、直ぐに病院へ移送されたがまもなく死亡した。この作業は、本管(内径40ミリメートル)から分岐して各家庭に通じている供給管(内径20ミリメートル)の部分で行われており、作業坑の大きさは、1メートル弱の升形の立て坑に60センチメートルほどの横穴を掘ったものであった。
2人が倒れたときの現場の状況は、作業坑の横穴の奥に頭を突っ込んだ状態で意識を失っており、ガス管の状態は、横穴の奥のところの管が上方に立ちあがっているジョイント部分で折れていた。
このことは、作業中にガス管に何らかの衝撃を与えたため、腐食していたガス管が折れ、そこからプロパンガスが漏れ出し、このガス漏れを止めようとした作業員が頭を突っ込み、漏れたプロパンガスで酸素欠乏状態になっていた空気を吸引して、意識を失ったものと考えられる。
原因
この災害は、ガス漏れしているガス管を交換するため、作業坑のなかで作業をしていた作業員が、大量に流出したプロパンガスを止めようとして、作業坑の横穴の奥へ頭を突っ込み、作業坑内に充満していたプロパンガスにより、酸素欠乏状態になっていた空気を吸引し、酸素欠乏症になったものである。このような災害が発生した原因としては、次のようなことが考えられる。1 ガス管交換作業中に、ガス管が腐食している部分が折れ、そこから大量のプロパンガスが流出したこと。
2 流出したプロパンガスが作業坑内に滞留し、作業坑内が酸素欠乏状態となったこと。
3 漏れ出したプロパンガスが、作業坑内に滞留することを防ぐための換気が行われていなかったこと。
4 作業員にプロパンガスの充満による酸素欠乏の危険性についての知識がなかったこと。
5 ガスが漏れているガス管が腐食していてもろくなっていることを、作業員がよく認識していなかったため、スコップ、カッターなどでガス管に強い衝撃を与え、ガス管を折損したこと。
対策
本件のようなプロパンガスの流出による酸素欠乏症を防止するためには、次のような対策が必要である。1 ガス管の交換の為の作業坑を設ける場合には、作業個所にあった適切な位置および大きさとすること。
2 作業坑の形状について、作業性、ガスが流出したときの危険性などに考慮したものとすること。
3 ガス管の交換を行う場合には、ガスを確実に遮断すること。
4 酸素欠乏症の発生を防止するため、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を、18パーセント以上に保つように換気し、または空気呼吸器などの呼吸用保護具を使用させること。
5 作業坑内でガス管の交換作業を行うときは、既設のガス管に損傷を与えることなどの無いようにすること。
6 ガス管の交換などの作業を行う作業員に対し、ガス管から漏出するプロパンガスによる酸素欠乏症の危険性について教育を行うこと。