浚渫した土砂を運ぶ土運船の浮力タンクの内部を点検中酸素欠亡
業種 | 港湾海岸工事業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 港湾海岸工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1107
発生状況
この災害は、港湾浚渫工事において、土運船の浮力タンク内を点検中に酸素欠乏症のために死亡した。海底の土砂を運搬する土運船の左舷側が沈んで傾いていたので、積んであった土砂をバージアンローダー船で吸引したあと、土運船の浮力タンクの点検を行うため、左舷および右舷のそれぞれ中央部のマンホールを開放した。点検の結果、左舷側の船底に海水(ビルジ)が溜まっているのを発見したので、水中ポンプでビルジを吸出しマンホールの蓋を閉じた。右舷側のマンホールから船底をのぞいてもビルジがあまり溜まっているようには見えなかったので、水中ポンプでの排出作業は行わず、また、マンホールの蓋はそのまま開放したままにしていた。
2回目の土砂の積み込みが終了したので、開放してあった右舷側のマンホールの蓋を閉じたあと、作業者が1人行方不明になっていた。
そのため、土運船のマンホールを再び開放し、浮力タンク内をのぞいてみたところ、行方不明になっていた作業者が船底で倒れているのが発見された。
原因
この災害の直接の原因は、作業者が単独で何の防護措置もしないで酸素欠乏の状態にある土運船の浮力タンクの中に入ったことにより発生したものである。これはさらに、次のようなことがその原因となっているものと考える。1 土運船の浮力タンクが長期間密閉された状態であったため、タンクの内壁がさびなどで酸化が進行し、タンク内の酸素が消費されて酸素欠乏の状態となっていたこと。
2 酸素欠乏の状態の浮力タンク内に、作業者が単独で何の保護具なども着用しないで立ち入ったこと。
3 浮力タンクの点検作業に際し、タンク内の空気の酸素濃度の測定を行っていなかったこと。
4 浮力タンクへ立ち入る前に、タンク内の空気を十分換気していなかったこと。
5 現場内に1台酸素警報器が備え付けられていたが、必要な性能および有効性を具備しておらず、かつ、その機器の使用方法などを作業者などに十分教育していなかったこと。
6 現場の作業者などが酸素欠乏症などの危険性について、十分理解していなかったこと。
対策
このような酸素欠乏症による災害を防止するためには、次のような対策が必要である。1 酸素欠乏危険場所には、作業者の立ち入りを禁止すること。
2 浮力タンク内などの酸素欠乏が予想される個所で作業を開始するときは、タンク内の空気の酸素濃度を測定すること。
3 測定の結果、酸素濃度が18パーセント未満の場合には、換気を行い、酸素濃度が18パーセント以上となるまで換気を続けること。
4 換気を十分に行うことができない場合、酸素欠乏などの被災者の救出を行う場合などには、空気呼吸器などの呼吸用保護具を使用すること。
5 酸素濃度などを測定するための適切な測定器を選定し、備え付けて置くこと。
6 備え付けてある測定器について、正確に測定できるようにその使用方法などについて教育、訓練などを実施しておくこと。
7 酸素欠乏危険作業を行う場合は、酸素欠乏危険作業主任者を選任し、所定の職務を行わせること。
8 酸素欠乏危険作業などに従事する作業者に対し、酸素欠乏等にかかる特別教育を実施すること。