下水道工事を推進工法で施工中、立坑内で酸素欠乏により死亡、救助の2名も被災
業種 | 上下水道工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 上下水道工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他の作業環境の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1106
発生状況
この災害は、汚水幹線築造工事の作業中に発生したものである。仕事を受注した元請は、立坑6基を堀削し、立坑間を推進工法により塩化ビニール管(直径200mm〜250mm)で連結する工事を1次の専門業者に下請させた。
作業手順は、発進立坑からリード管(直経6cm)を先進させ、到達立坑まで貫通させた後、リード管の最後部に堀削用カッターと塩化ビニール管を取り付けて、堀削した土砂を塩化ビニール管内にあるスクリューを利用して土砂を発進立坑まで排出するものであった。
災害発生当日、2交替制の後番である夜勤組は、No1立坑内の廃土をバキュームにより排出する作業と発進立坑No1と到達立坑No2の間の管を推進する作業を行うことになった。
午後10時10分頃、推進工のAは、到達立坑No2に向かった。午後10時20分頃、推進工のBは、発推立坑No1の中から塩化ビニール管の推進を開始する旨、到達立坑No2にいる推進工のAにインターホンを使って呼びかけたが反応がなかった。
推進工のBは、塩化ビニール管を20cmだけ推進を行ったのち、到達立坑No2に行きのぞき込んだところ、立坑No2の底に仰向けで倒れている推進工のAを発見したので、救出しようと中に入つたが急に意識を失った。
また、二人が倒れているのを見るため中に入つてきた警備員も急に意識を失った。
原因
この災害は、汚水幹線築造工事の作業中に発生したものであるが、その原因としては、次のことが考えられる。1 直接的な原因
立坑内No.2周辺の地層には、深度4m〜5.7mの粘性土層、2m付近の砂質土層に大量の第一鉄塩類が還元状態で存在しており、また、深度6.5m以下の砂質土層の地下水は多量の第一鉄イオンを含んでいたことから地層の中で酸素が消費され、酸素の少ない空気が生成されていたと推定される。
これが、深度5.7m〜6.5mの間の地下水のない不飽和層に蓄えられ、工事により酸素欠乏空気が立坑内に流入したと考えられる。
2 間接的な原因
酸素欠乏危険作業場所であるのに、酸素欠乏危険作業主任者を選任していないこと、作業開始前に立坑内の酸素濃度を測定していないこと、立坑内の換気を行っていないこと、酸欠事故発生後、直ちに作業者の立入を禁止していないこと、酸欠に関する特別の教育を行っていないこと、現場の安全衛生管理体制が整備されていないこと等があげられる。
対策
この災害は、汚水幹線築造工事の作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 酸素欠乏危険作業主任者の選任
法定の資格を有する酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者の指揮命令の下で作業を行うこと。
2 酸素濃度の測定と換気
作業開始前に酸素濃度を測定するとともに、作業中は立坑内の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。
3 二次災害の防止
作業員に対し、酸素欠乏危険についてあらかじめ、十分に教育を行なうとともに、酸素欠乏の事故発生後には立入り禁止を指示し、2次災害が発生しないよう措置すること。
また、救助を行なうときには、十分な知識を有する者の指揮のもとに、必要な装備を行なったのち実施すること。
4 安全衛生管理体制の整備等
現場の安全衛生管理体制を整備するとともに、施工計画の策定に先立ち危険性の事前評価を十分に行なうこと。