防火水槽工事において、コンクリート養生のための練炭で一酸化炭素中毒
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1105
発生状況
この災害は、防火水槽の建設工事において発生したものである。防火水槽は、縦5.6m、横9m、深さ1.5m、容積約73m3のもので、工事は災害発生の2日前に水槽のコンクリート打設が概ね終了し、その日の夕方、水槽内と外回りのコンクリート養生のため、現場代理人は、水槽内に2個の練炭コンロに2個づつ練炭を着火して入れ、また、水槽の外回りにも10個の練炭コンロに2個づつの練炭を着火して配置した。また、水槽内に出入りするマンホールには、ビニールシートをかぶせて現場を離れた。
災害発生の前日は、現場代理人が休んでいたので、現場見習いが一人で除雪作業を行い、午前中に外回りの練炭のみを交換し、午後5時頃再び外回りの練炭を交換した。
災害発生当日、現場見習は午前11時頃現場に向い現場代理人は午前11時35分頃現場に到着した。
現場代理人が到着したとき、現場見習の姿が見えなかったので、水槽内に入ったところ、現場見習があお向けに倒れていたので人口呼吸をし、マンホールの下まで引きずって出そうとしたが重くて一人では救出できないので、いったん水槽から出て救急車と会社に連絡した。
会社からは、建築部長と工事主任が駆付け、とともに水槽内に入り救出しようとしたが、マンホールが狭いため救出できず、そのうち、入った三人も一酸化炭素中毒に被災した。
原因
この災害は、防火水槽の建設工事において発生したものであるが、その原因としては次のことが考えられる。1 一酸化炭素が充満したこと
コンクリートの養生のために設置した練炭から発生した一酸化炭素が水槽内全体に充満し、換気や一酸化炭素用防毒マスクの着用等適切な予防対策をとらないまま練炭の入れ替え作業をしたこと。
2 救急方法を誤ったこと
救助に必要な装備を準備、装着をしなかったため、救出作業に当たった者までいわゆる2次災害に遭遇し、一酸化炭素中毒にかかってしまったこと。
3 安全衛生教育がなされていなかったこと
現場見習の者は勿論のこと、関係作業者に対して、練炭によりコンクリートの養生をした場合の一酸化炭素中毒の危険性等について適切な安全衛生教育を行っていなかったこと。
4 作業計画がなかったこと
工事の施工に当たり、事前に、練炭使用によって予想される一酸化炭素中毒等の危険性とその予防対策等について検討し、それに基づく作業計画が作成されていなかったこと。また、安全衛生管理体制もなかったこと。
対策
この災害は、防火水槽の建設工事において発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 コンクリートの養生方法の再検討
コンクリート構造物の養生には、古くから練炭が使用されているが、一酸化炭素中毒事例も多く発生しているので、他の安全な養生について検討を行うこと。
2 換気、保護具の使用の徹底等
練炭等有機物の燃焼ガスが充満するおそれのある密閉された水槽内に、やむをえず作業者を立ち入らせる場合には、事前に十分な換気を行い、一酸化炭素濃度、酸素濃度等の作業環境測定を行うこと。
また、場合によっては、ホースマスク等有効な保護具を使用させること。
3 作業手順の作成と徹底
練炭を使用する場合の危害防止について十分検討した上で作業手順を作成し、関係作業者に周知すること。
4 作業の監視
一酸化炭素中毒等の危険がある場所で作業を行なわせる場合には、作業責任者等を配置し、作業の監視を行なわせること。