フェノール樹脂の合成反応工程で、異常反応の非常処置作業中に未反応の高濃度フェノール液が皮膚に接触して化学火傷
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 化学設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他保護具を指定していない | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.1077
発生状況
本災害は、フェノール樹脂製造プラント内で発生した。この工場のフェノール樹脂合成工程は、原料のフェノールと酸を反応釜に仕込み、混合、昇温しながらホルマリンを添加、さらに変性剤を加え、蒸気加熱して反応を終了させたのち、脱水して樹脂を生成する。
災害が発生した工程における勤務は、作業指揮者と4名の作業者の班編成で、前日の午後11時から当日午前8時までの予定であったが、反応工程の途中でトラブルが生じた。
反応工程中、作業者の操作ミスにより反応釜内の温度が上がり過ぎたため、冷却操作に切り換えた。この操作にも誤りがあって、中間生成物である発泡レジンが広範囲の配管その他の設備に付着し、これらを清掃した。さらに、この清掃作業でも作業指揮者に誤認があって、清掃するため「逆止弁」の蓋を開けさせたところ、脱水液が噴出した。そのため、午前10時30分ごろ、この非常処置作業に従事していた前記4名の作業者が、脱水液中の高濃度フェノールにより皮膚に化学火傷を負ったものである。
原因
この災害の直接の原因は、フェノール樹脂合成工程中のトラブルによって発泡レジンが付着したストレーナーの清掃をしようとした作業指揮者が、誤って逆止弁の清掃を指示したため、逆止弁を開放してしまい、ここから高濃度フェノールを含んだ脱水液が噴出して4名の作業者の皮膚に接触したことにある。作業指揮者を含む5名の班員は、いずれも逆止弁の存在は知っていたが、その構造、機能についての知識がなかったためストレーナーと誤認した。
また、作業者は、保護具として防災面とゴム手袋は着用していたが、作業着は不浸透性の保護衣でなく綿製品であったため、頸部、胴体、上下肢に被災した。
本災害の間接原因としては、次の事項が指摘される。
[1] 本工程の指図書における真空調整の指示が明確でなかったため、作業者の誤操作により反応機内の温度が上昇し続けるというトラブルが生じ、真空冷却が必要となった。
[2] 真空冷却する際に作業者がレジンの移送段階における操作と誤認して「脱水配管」に切り換え操作をしたため、ストレーナー等の清掃作業が必要となった。
対策
化学工業における安全衛生対策のうち、特に、非定常作業にかかる災害体験に基づいた同種災害の防止対策は、当該企業のみならず他社の関係者にとっても貴重である。本件災害は、非定常作業における対応の不備のため化学火傷により4名の休業災害をもたらせたが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が望まれる。
1 工程管理に関する対策 | |
(1) 工程作業に関する指図書の記入事項は、単位作業毎に明確に示す。 (2) 真空冷却を行う場合は、必ず「還流配管」で行うよう徹底する。 (3) 逆止弁の構造、機能について再教育する。 | |
2 安全衛生管理体制に関する改善対策 | |
(1) 経験のない作業を開始するときは、上司の指示を受けて着手するよう徹底する。 (2) 被定常作業のうち、有害物へのばく露リスクが高いと予測され、かつ、比較的作業頻度の高いものについては作業標準を定める。 (3) 有害物へのばく露リスクが高いと予測される作業については、保護具の着用基準を見直す。 |