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労働災害事例

石油精製プラントの脱硫装置の定修工事中に漏洩した硫化水素により多数が中毒

石油精製プラントの脱硫装置の定修工事中に漏洩した硫化水素により多数が中毒
業種 石油製品・石炭製品製造業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:3人 休業者数:20人
不休者数:23人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 運転中の機械、装置の

No.1072

発生状況

この災害は、石油精製プラントの脱硫装置の定修工事中に硫化水素ガスが大量に漏洩し、作業をしていた労働者46名が被災したものである。
 災害が発生したのは、2号プラントで、ここには水添脱硫装置、硫化水素ガスから硫黄又は硫酸を回収するための硫黄回収装置、廃硫酸再生装置が設置されており、硫化水素ガスの流出は、脱硫工程エリア内において発生した。
 災害発生当日は、午前9時頃から4名の作業者が前日に続き作業を行ない、予定の仕切弁、圧力指示調節弁上流の閉止板を取り外した。
 一方、当日は、同じ脱硫工程エリア内で別の班による「計器用エア配管工事」が同時に行われており、午前9時30分頃、既設配管のエアを止めるため作業指揮者が「計器用エア供給元弁」であるバルブを閉止した。
 その操作により、1号プラントから2号プラントの廃硫酸再生装置に向けて送給されていた硫化水素ガスが安全装置系統の配管に流入し、圧力指示調整弁の下流弁の取り外し部から大量に(約14分間に63立法メートル)漏洩し、付近でグラインダー仕上げをしていた下請作業員3名が死亡したほか、定修工事の作業に従事していた発注会社の職員、下請作業員等合わせて46名が硫化水素中毒に被災するという大惨事となった。

原因

この災害は、石油精製プラントの脱硫装置の定修工事中に硫化水素ガスが大量に漏洩し、作業をしていた労働者46名が被災したものであるが、その原因としては、次のことが考えられる。
1 定修工事を一部稼動中に行ったこと
 二つのプラントから中間生成される硫化水素を一元的に処理する方式になっているのに1号を稼働させたまま安全装置系の整備工事を行った。
2 作業計画が不十分であったこと
 ブラン閉止板位置の変更については十分な検討をせず、調節弁の下流弁上流側に閉止板を挿入し、縁切りを実施した。
3 安全確認が不十分であったこと
 仕切弁取外し時に、配管の生き・死を確認せず、しかも、配管が生きている表示(赤テープ)を見過ごした。
4 安全衛生管理体制が不備であったこと
 災害発生当日、工事の総合指揮を行なうべき発注会社の作業指揮者が不在のまま、下請け会社の作業者だけで作業を行なった。

対策

この災害は、石油精製プラントの脱硫装置の定修工事中に硫化水素ガスが大量に漏洩し、近くで作業をしていた多くの労働者が被災したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 危険有害性等の事前評価の実施
 化学プラントの定期修理等非定常作業を行なう場合には、対象となるプラントの内容、製造工程の特性を十分に検討する。
2 安全管理体制の整備
 下請けを含めた安全確保のため、統括安全衛生管理体制の整備と活動の活発化を図る。
3 作業中の安全確保
 非定常作業の安全を確保するため、作業計画書の作成、指揮命令系統の明確化、作業手順の明確化、連絡及び合図の周知徹底、禁止事項当の周知徹底等を図る。
4 安全衛生教育の実施
 化学プラントの作業に従事する者に対し安全教育を実施する。
5 安全作業マニュアルの整備と徹底
 作業に関する設備、仮設設備等の事前評価に基づき、作業マニュアルを策定し、関係作業者に徹底する。