自動車部品洗浄機の洗浄液交換作業中有機溶剤中毒
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業箇所の間隔空間の不足 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.1071
発生状況
この災害は、自動車部品製造工場において、竪型2槽式洗浄機の洗浄液である第二種有機溶剤ジクロロメタンの交換作業中に発生したものである。当日の作業は、作業指揮者のもとに、午前中はポンプによる洗浄液の抜き取りが終了し、午後2時過ぎから洗浄槽内にたまっていたスラッジ(ゴミ等の汚泥)を取り除くことになった。
まず、作業指揮者と他の1名が、洗浄機の開閉口から機内に入り、手作業により清掃作業を始めた。
蒸発槽の中へ入った職員は、中に入ってから約1分後に上げてほしいと言ったので搬器で上げようとしたが、職員はふらふらして足を滑らせ同槽の底へ墜落し意識を失った。
そこで、作業指揮者は槽の底に降り、倒れている職員を抱え上げようとしたが、自分も意識を失って倒れた。
その後、救急車とともに消防救助隊(レスキュー隊)ら消防署員が現場に到着し、救助活動を開始したが、救出までかなりの時間がかかり、結局3名が槽内で倒れ、作業指揮者は同日午後5時、1名は翌日午後11時に有機溶剤中毒で死亡、応援に入った者は約2か月の休業となった。
原因
この災害は、自動車部品製造工場において、竪型2槽式洗浄機の洗浄液である第二種有機溶剤ジクロロメタンの交換作業中に発生したものであるが、その原因としては、次のことが考えられる。1 有害なガス・蒸気が充満していたこと
槽内には第2種有機溶剤のジクロロメタンを96%含んだ洗浄液が深さ数センチメートル程度残っていた。
2 換気が不十分であったこと
槽内の清掃作業開始前に水で洗浄し、また、槽に立ち入る前に槽内の空気を清浄な空気で置換しなかった。
3 保護具の備え付けがなかったこと
有機溶剤中毒防止用の防毒マスク又は酸素欠乏症等防止のための送気マスクを現地に持ち込んでいなかった。
4 救急訓練がなされていなかったこと
密閉された場所での救出について教育訓練がなされていなかった。
5 作業計画が無かったこと
顧客先の作業環境に対応した作業計画が定められていなかった。
対策
この災害は、自動車部品工場において、豎型2槽式洗浄機の洗浄液であるジクロロメタンの交換作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 安全衛生管理体制の整備
作業者の安全と健康を守るため、安全管理者、産業医の選任等安全衛生管理体制の整備を図ること。
2 安全衛生教育の充実
雇い入れ時、作業内容変更時の安全衛生教育は勿論のこと、有害業務に従事する者に特別教育を行うこと。
3 作業環境測定等の実施
有機溶剤業務に従事させる場合は、臨時又は短時間作業の場合にも安全な状態であることを確認すること。
4 作業マニュアル等の整備
有機溶剤等を取り扱う作業については、緻密な作業マニュアルを作成すること。
5 情報を収集し計画を定めること
出張作業等においては、作業環境の変化もあるので、作業に先立ってその会社から詳細な情報を収集し、それに基づいた作業計画を定め作業を行なわせること。