脱脂用洗浄機に残存していたトリクロロエチレンにより急性中毒
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1070
発生状況
この災害は、化粧品容器の塗装等を行なっている工場で発生したものである。災害発生当日、午前10時頃、被災者は、工場次長から使い残しのある塗料缶を洗浄室に集めてきて、それらを出来るだけ一缶に集めて洗浄室の前に出しておくよう指示され、この作業を正午まで行なっていた。
正午以降の行動は、断片的に目撃されているが、次のような経過と考えられる。
[1] 被災者の昼の休憩は、午後1時からとなっていたので、12〜13時の間は口紅容器の塗装ラインの作業を手伝っていた。
[2] 午後1時に、食事のために工場から外へ出た。
[3] 午後3時30分頃、夜食の注文を聞くため、洗浄室に行った時、被災者被災者は洗浄室内にいた。
[4] 午後4時15分頃、製造担当主任が、洗い場で出たゴミを捨てに行く途中に、被災者がトリクレン洗浄機の中にいるのを確認している。
[5] 午後5時30分になっても被災者が食堂に来ないので、同じ職場の係長が洗浄室へ呼びに行ったが見当たらず、トリクレン洗浄機の蓋が開いているので中をのぞくと、被災者が身体を「くの字」に折るようにして倒れていた。
原因
この災害は、化粧品容器の塗装等を行なっている工場で発生したものであるが、その原因としては、次のことが考えられる。災害の直接の原因としては、災害の翌日にトリクレン洗浄槽の空気中のガスを採取し、成分を分析したところ、被災者の顔があった処理槽のところでトリクロロエチレン1.6v/v%が検出され、これはトリクロロエチレンの許容濃度50ppmの320倍に相当するので、被災者は急性有機溶剤中毒で死亡したものと推定される。
間接的な原因としては、次のようなことが考えられる。
(1) 衛生管理体制の不備
有機溶剤の取り扱い業務に関する指揮命令系統が明確でなく、また、作業開始前の作業環境測定、作業の場合の中毒防止のための局所排気装置の稼動や防毒マスクの使用等衛生管理体制の整備、機能が不備であった。
(2) 衛生教育の未実施
作業者に対して物質の有害性、取り扱い時の留意事項、中毒防止のための措置等について教育を行なっていなかった。
対策
この災害は、化粧品容器の塗装等を行なっている工場で発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 管理体制の整備等
安全衛生推進者等の管理担当者、有機溶剤作業主任者等の指名
2 作業環境の測定
有機溶剤等を入れた容器等については、立ち入る前に換気し、検知管等により環境濃度を測定する。
3 作業マニュアルの策定
定常的に行なう作業はもちろんのこと、点検、清掃等臨時的な作業についても作業マニュアルを策定する。
4 安全衛生教育の徹底
作業員に対しては、必ず取り扱い物質の危険・有害性、人体に対する影響、等について教育を行なう。
5 掲示
作業場所に人体に及ぼす作用、取り扱い上の注意事項、中毒が発生した場合の応急措置等を掲示する。
6 作業主任者の職務の励行
有機溶剤作業主任者には、その職務を励行させる。