廃水タンクの内壁コーティングの準備作業中、マンホールの蓋を開けたところ爆発
業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 組合せては危険なものを混ぜる |
No.1059
発生状況
この災害は、製油所構内にある廃水処理装置の補修工事のための準備作業中に、タンク内で爆発したものである。廃水処理設備は、プラントの各工程から排出される廃水から環境汚染物質を除去するために必要な油水分離装置、溶存ガス除去装置、活性炭吸着装置などで構成されている。
処理量を一定量に保持するために、廃水タンクが設けられている。通常運転時の廃水タンク内は、上部60%が気体で占められ、残りが油水分離された廃水と底部にスラッジが堆積している状態である。
廃水タンク内の気体部は、硫化水素が大半を占め、窒素、アンモニア、ヘキサンなどが若干含まれている。
補修工事は、廃水タンク(容量250m3)の掃除とタンク内壁のコーティングを更新する者であり、A会社に元請として、発注された。
災害発生当日、補修工事の準備作業が午前9時に始まり、タンク内部の残留廃水の状況を確認するため、チェーンブロックを用いて廃水タンク側面にある下部マンホールの蓋を15cmつり上げ、スラッジの上面がマンホールの最下部以下にあることを確認し、マンホールの蓋を元に戻したところ、「ゴー」という音がして、マンホールから白い煙とともに火が噴出した。
原因
この災害は、廃水タンクの内部の掃除と内壁のコーティングを行うための準備作業中に、タンク内で爆発が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 可燃性ガスの残存 | |
(1) 窒素ガス置換の不足 廃水に含まれている硫化水素など可燃性ガスが、置換不足のため残存していたこと。 (2) 溶存可燃性ガスの遊離 スラッジに溶存していた可燃性ガスが、時間の経過とともに遊離したこと。 (3) 油分の残存 プラントから排出される廃水に含まれる微量の油分が、スラッジの表面に残存していたこと。 (4) 爆発限界範囲内の可燃性ガス タンク内にあった混合ガスが、爆発限界範囲内にあったこと。 |
廃水に含まれた硫化水素により硫化鉄が生成され、タンク内に入り込んだ空気と接触して、酸化、発熱反応を起こしたこと。
3 作業手順の不備
非定常作業時の作業手順が、作成されていなかったこと。
対策
この災害は、可燃性ガスが残存するタンクのマンホールを開放しているときに爆発が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 ドレーンを一定時間ごとに行い、スラッジが堆積しないようにすること。
2 危険ガスを測定する設備を設けること。
3 マンホール開放後も、窒素パージを継続すること。
4 非定常作業時の作業の安全化を検討し、作業の標準化を行うこと。
5 爆発火災の危険性のある場所での作業が輻輳して行われないように、作業間の調整を行うこと。
6 爆発火災の危険場所は、関係者以外の立ち入り禁止区域を設定すること。
7 爆発火災の危険場所周囲での、火気使用を厳禁すること。
8 爆発火災を想定した退避経路を設定すること。
9 作業指揮者を選任し、その者に作業方法、などを関係作業員に周知させること。
10 請負業者の作業員に対して、作業内容について、具体的に指示させること。
11 新たに整備した作業標準による教育を、模擬訓練を含めて実施すること。