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労働災害事例

ドラム缶から使用済みの乾燥剤を柄杓で汲み出していたところ、ドラム缶が突然爆発

ドラム缶から使用済みの乾燥剤を柄杓で汲み出していたところ、ドラム缶が突然爆発
業種 無機・有機化学工業製品製造業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の危険物、有害物等
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 物の置き場所の不適切
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) その他

No.1058

発生状況

この災害は、工場敷地内にある産業廃棄物処理場で、内容積200lのドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤を、柄杓でトラクタショベルのショベルへ移し替え作業を行っているときに発生したものである。
 被災者の業務は、3交代制勤務の一員として、焼却炉の運転およびプラントから排出される産業廃棄物を工場敷地内にある産業廃棄物処理施設に運搬するなどが主なものである。
 災害発生当日、親企業の日勤者Aから被災者に対して、野積み場に約半年間保管されていた4本のドラム缶に収められた乾燥剤を、汚泥置場に廃棄するように指示があった。
 Aから指示を受けた被災者は、トラクタショベルのショベルにドラム缶に収められた乾燥剤を移し替えて、汚泥置場に運ぶことにした。
 この作業は、昼食後、被災者が一人で行うことになり、先ず、被災者は、Aの了解を得て、車庫にあったトラクタショベルを自ら運転して、ドラム缶が保管されている野積み場へ移動し、乾燥剤をトラクタショベルのショベルへ移し替える準備を終えた。
 先ず、1本目のドラム缶から乾燥剤を柄杓で移し終え、さらに2本目のドラム缶からトラクタショベルのバケットへ乾燥剤を1本目と同様に、柄杓で移し始めたところ、ドラム缶の内部で「パチパチ」という音が聞こえた瞬間、ドラム缶内で突然爆発が起こり、ドラム缶は3つに千切れて飛び散っていた。

原因

この災害は、工場敷地内にある産業廃棄物処理場で、内容積200lのドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤を、柄杓でトラクタショベルのショベルへ移し替える作業を行っているときに発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 使用済みの乾燥剤を事故後分析したところ、フロンおよび1.1ジクロルエチレンが含まれていることが判明したことから次のことが推定される。
 (1) フロンは比較的安定した物質であるが、長期間に亘り屋外の野積み場にドラム缶に閉じこめられて保管されている間に、弗素と水素が分離し、1.1ジクロルエチレンが生成されていたこと。
(2) 1.1ジクロルエチレンの一部がドラム缶内に閉じこめられた空気または他の物質に含まれた酸素と重合して過酸化物を生成していたものと推定されること。
(3) この過酸化物と1.1ジクロルエチレンとが混合して爆発限界にあったものと推定されること。
2 過酸化物に変化した1.1ジクロルエチレンと1.1ジクロルエチレンモノマーのガスがドラム缶内で充満している状態に、金属製の柄杓でドラム缶に衝撃を与えたことによって爆発したものと推定される。
3 ドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤から、危険物の発生を想定した検討が行われていなかったこと。

対策

この災害は、工場敷地内にある産業廃棄物処理場で、内容積200lのドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤を、柄杓でトラクタショベルのショベルへ移し替える作業を行っているときに発生したものである。
 フロンは安定した状態の物質といわれるものであるが、ドラム缶に密閉された状態で長期間屋外に保管されていたことから、フロンが化学的変化を起こし、1.1ジクロルエチレンが発生したことによりこの災害は発生したものといえる。
 したがって、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 産業廃棄物として、廃棄するものについては、事前に、化学分析をい、その結果に基づき、危険性および化学的変化の可能性を検討すること。
2 危険性の検討結果を踏まえて、廃棄前に、危険性を排除する措置を講ずること。
3 長期間保管する場合には、保管中に化学的変化による危険物が生成しないような措置を講じておくこと。
4 廃棄物の危険性および化学的変化についての事前検討を、相当の技術力を有するスタッフにより実施する仕組みを確立すること。
5 事前検討の結果により、廃棄物取扱作業手順および点検要領をマニュアル化し、作業員に対し、その周知徹底のための教育を実施すること。