Fe−Ni(フェロニッケル)のショットを製造中、水蒸気爆発が発生し、熱傷を負う
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 金属材料 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 組合せては危険なものを混ぜる |
No.1057
発生状況
この災害は、フェロニッケルの製造作業において、溶融金属を遠心力で小片(ショット状)にしたものを水中で冷却する工程で発生したものである。この事業場では、フェロニッケルの精錬を行なっているが、電気炉により溶体となったフェロニッケルは鋳造して、インゴット状とするか、またはショット状の製品としているが、本災害はショット状製品の鋳造中に発生した。
フェロニッケルの製造は、次の手順で行なわれる。
(1) 溶体のフェロニッケル(鉄基ニッケル合金、Fe−Ni)が入った取鍋をクレーンで傾注台にセットし、この傾注台を油圧で傾けて溶体を溝に流し込む。
(2) 溶体は溝の先端の穴から回転しているターンテーブル上に落ち、遠心力により飛び散り、それがターンテーブルの下の満水のピットに落ち冷却されショットになる。
(3) ピット底に沈んだショットはコンベアで引き上げられ、乾燥される。
災害当日は、この製造工程で5回目の傾注を開始してから15分後にピット内で水蒸気爆発が発生したため、設備の監視作業中の被災者が飛散した熱水をかぶって熱傷を負った。
原因
この災害は、フェロニッケルのショット製造中に発生したものであるが、次のことが考えられる。1 ショットを例画するピット内の水温が高かった(事故発生時約60℃)ため、ショットが十分冷却されず、ショットがくっ付き合った状態で中に水を閉じ込めたところに、熱い溶体が流し込まれたため、中の水が急激に膨張して、水蒸気爆発が発生した。
2 水温が高かった原因としては、冷却水の入ったピットは、ショット製造中は常に上方から水が給水されているが、攪拌されていないため、ピット内上部の水の温度は下がるが、ピット内下方の水は流動が少ないため下がってはいなかった。
3 製造設備の運転者は、通常ピットの水温を監視し、65℃以上になるおそれがある場合には、通常の上方からのフロー水に加えて、ポンプを駆動させて圧送水を補給することになっていた。しかし、水温計はピットの上方1ヵ所のみ設置されていたため、水温管理が十分にできなかった。
対策
この災害は、フェロニッケルのショット製造中に水蒸気爆発が生じたものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 製造条件の変更と安全確認
製造条件を変更したときには、品質とエネルギーの節約の面からの検討だけでなく、異常反応等安全面からの検討を十分に行なうこと。
2 温度管理の徹底
温度管理については、安全管理の面からは勿論のこと品質管理の面からも少なくともピットの上下の温度が把握できるようにすること。
3 作業手順の見直し
爆発の危険が、当初より予測される場合には、安全面を加味したより具体的な作業手順に改定すること。
4 安全教育の徹底
水を高熱の溶融物等が巻き込むと一瞬に1,000倍以上に膨張すると言われており、作業の指揮者は勿論のこと、関係作業者に対して繰り返し、その危険性、防止対策等について安全教育を行なうこと。