アルミニウム再生処理工程のアルミチップ研磨機の調整中、アルミニウム粉じんが爆発
業種 | 鋳物業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 爆発性の物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置等を指定外の方法で使う |
No.1054
発生状況
この災害は、鋳鋼製造工場にアルミニウム再処理工程を新設し、各設備の調整および試運転中に、アルミチップ研磨機用集じん機内でアルミニウム粉じんが爆発したものである。災害発生当日の午前10時頃、アルミチップホッパーから研磨機へアルミチップを送給するトランジーの試運転を開始したが、搬送不調があったので部品を交換するなどの改造作業を行い、午後1時頃にトランジーの調整を終了した。
その後、午後2時頃まで、原料貯蔵ホッパーへアルミチップを人力で入れる作業が行われた。この間、集じん機は、午前10時頃から連続して運転されていた。
午後2時頃から、トランジーを稼働させて、搬送量を調整しながらアルミチップの研磨機への送給を始め、研磨機の試運転を開始した。
研磨機の試運転を開始してから30分が経過したとき、焙焼後のアルミチップがホッパー内になくなったので、作り置きしてあったアルミチップを人力でホッパー内に補給した。
そして、トランジーおよび研磨機の運転を再開して30分が経過したとき、突然、研磨機から屋外に設置されている集じん機に至るダクトから火が吹きだし、「ドーン」という音とともに集じん機内で爆発を起こし、ダクト、集じん機および建家のスレート壁の一部が吹き飛んだ。その際に、研磨機の近くにいた作業員がダクトから吹き出した火炎にあおられて顔面に火傷を負い、構内道路を歩行中の作業員が吹き飛ばされたスレートの破片に当たり負傷した。
原因
この災害は、鋳鋼製造工場にアルミニウム再処理工程を新設し、各設備の調整および試運転中に、アルミチップ研磨機用集じん機内でアルミニウム粉じんが爆発したものであるが、その原因としては、次ようなことが考えられる。1 アルミチップ材料に、粒径が0.5mm以下という異常に細かい粒子が含まれていたこと。
2 集じん機内では、高濃度で粉じんが浮遊する状態で、ろ布の目詰まりを除去するためにコンプレッサーのエアーを30秒間隔で吹き込み逆洗しており、粉じん雲が発生しやすい状態にあったこと。
3 研磨機内では、回転するドラム内でアルミチップが滞留し、摩擦により研磨されているため、アルミチップの表面が80℃、内部で60℃程度までに余熱された状態にあったこと。
4 以上に掲げた雰囲気の中で、次に掲げる推定しうる着火源から、ダクト内または集じん機内で爆発が発生したものと考えられる。 | |
[1] 酸化アルミニウムの発火 ダクト内に堆積していた酸化アルミニウム粉じんが、研磨機で発熱した粉じんにより熱せられ発火したものと推定されること。 [2] 静電気の発生 ダクト内または集じん機内で、静電気が発生したものと推定されること。 |
対策
この災害は、鋳鋼製造工場にアルミニウム再処理工程を新設し、各設備の調整および試運転中に、アルミチップ研磨機用集じん機内でアルミニウム粉じんが爆発したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 安全衛生に関するアセスメントを行うなど、あらかじめ危険度に応じた有効な安全措置を講じること。
2 集じん機にいたるダクトは、目的別系列または容量を分散させるように、分割して設置すること。
3 ダクトには、堆積粉じんを除去するために、要所に掃除口を設けること。
4 ダクトは、粉じんが堆積しないように、十分な搬送速度を確保するとともに、急角度の立ち上がりおよびポケット部をを設けない構造とすること。
5 集じん機、ダクトおよび帯電防止用ろ布には、確実な接地工事を行うこと。
6 放出エネルギーを安全な方向に導く十分な面積を有する爆発放散口を設けること。
7 研磨は、極微細なアルミニウム粉じんを発生させるので、不活性ガス雰囲気内で行うようにすることが望ましいこと。
8 研磨機付近は、定期的に清掃を行い、アルミニウム粉じんを堆積させないようにすること。