鉄板の曲げ加工のため、アセチレン吹管に点火したところ漏洩したアセチレンガスが爆発
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 工具、用具、材料、くず等を不安全な場所に置く |
No.1053
発生状況
この災害は、アセチレンガスおよび酸素を用いて、鉄板を加熱しながら曲げ加工の作業を始めるために、アセチレンガス溶接用吹管に点火用ライターで点火したところ、漏洩アセチレンガスが爆発したものである。災害発生当日、屋内作業場に定置されている定盤上で、午前8時から被災者A、Bの2名が、ブルーワークを製作するために、加熱による鉄板の曲げ加工作業を始めた。当初、この作業は屋外作業場で行う予定であったが、厳寒であったため、作業場所を屋内作業場に変更して行われた。
ブルーワークに加工する鉄板は、縦390cm、横140cm、厚さ7mmのもの2枚であった。この鉄板を、加工しやすくするために、縦17cm、横50cm、高さ15cmの矢と呼んでいる三角錐の木片を定盤上に置いた。そして、この矢の上に鉄板をクレーンにより運び込んだ。鉄板を矢の上にセットし、被災者Aがアセチレン吹管に点火して鉄板を加熱し、作業員Bが加熱された鉄板を急冷してそり返えさせるための水かけを行って、鉄板の曲げ加工の作業を開始した。
午前10時に15分間の休憩を取り、午前中の作業を終えて、昼の休憩に入った。午後1時から作業が再開され、午後3時から15分間の休憩となり、作業が中断された。この小休止が終了し、作業を再開するために、被災者Aがアセチレン吹管に点火ライターにより点火しようとしたところ、「ボン」という音とともに爆発が起こり、1枚の鉄板が1m程度、もう一枚の鉄板が80cm程度浮き上がって落下し、作業員2名は空中に放り出された。
原因
この災害は、アセチレンガスと酸素を用いて、鉄板を加熱しながら曲げ加工の作業を始めるために、アセチレンガス溶接用吹管に点火用ライターで点火したところ、漏洩したアセチレンガスが爆発したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 ブルーワーク製作のため、ガス溶接用アセチレン吹管によって、鉄板を加熱して曲げ加工する焼鉄作業を屋外作業場で行う予定であったが、寒さが厳しいため、作業者の一存で換気の悪い屋内作業場で行ったこと。
2 定盤上に矢という木製の三角錘の台を置き、その上に鉄板を置いて曲げ加工を行っていたため、鉄板と定盤との間に隙間を生じ、漏洩したアセチレンガスが滞留しやすくなったこと。
3 休憩時間に入るときの作業中断の際に、ガス溶接用アセチレン吹管の調整ネジを確実に締めることなく、定盤上に放置したこと。
4 作業者が、アセチレンガスの爆発混合気体が形成されているとは知らずに、ガス溶接用アセチレン吹管に点火したこと。
5 可燃性ガスおよび酸素を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の業務を行う者に必要なガス溶接作業主任者免許を受けた者またはガス溶接技能講習を終了した者でないものに、ガス溶接用アセチレン吹管による鉄板の加熱の作業を行わせたこと。
6 作業の危険性に対応した、作業指示、作業管理を行うための体制が不十分であったこと。
対策
この災害は、アセチレンガスと酸素を用いて、鉄板を加熱しながら曲げ加工の作業を始めるために、アセチレンガス溶接用吹管に点火用ライターで点火したところ、漏洩したアセチレンガスが爆発したものであるが、可燃性ガスの漏洩による同種災害の防止のためには、次のような対策を講じることが必要である。1 安全管理体制の整備と確立 | |
(1) 可燃性ガスによる溶接、溶断、加熱の作業には、有資格者を就かせること。 (2) 作業指揮者を指名し、その者に直接作業を指揮させること。 (3) 危険物を取り扱う作業場所の変更は、作業者個々の判断にゆだねないこと。 |
作業手順、留意事項などに関するマニュアルなどの整備と徹底を図ること。
3 安全作業の励行 | |
(1) その日の作業開始前に、ツールボックスミーティングなどを実施し、安全作業の励行を確実にすること。 (2) 作業を中断する際には、吹管のバルブコック類を確実に閉止すること。 |
作業に使用する機器類の点検基準を定めておくこと。
5 安全教育の実施
マニュアルが確実に励行されるように安全教育を実施すること。