コンクリート養生の練炭による一酸化炭素中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.1027
発生状況
災害が発生したのは防火用貯水槽の建設工事現場である。被災者は、当該工事を請け負った会社の代表者A及び作業者B、C2名の合計3名である。
当該防火用貯水槽は地中に埋没させる型式の縦横4.5m、深さ4.95mの大きさであり、設置位置付近を一回り大きく掘削してから基礎、側壁、天井の順に施工して行くものである。
災害発生前日には、午後5時頃に貯水槽の天井部分の厚さ25cmのコンクリの打設が行われた。
災害発生当時の現場の気候は、まだ、夜間には気温が氷点下に下がるような状態であり、そのため、打設されたコンクリートを養生する必要があった。
養生の方法は、貯水槽全体を単管パイプで枠組みし、その上をビニールシートで覆った状態とし、単管パイプの枠組の上部には天井部分のコンクリート打設の際に足場として使用した板をそのまま敷き詰めたままの状態とし、貯水槽の側壁面とビニールシートとの間の約50cm程度の幅がある部分の地面に筒型の練炭火鉢を合計11個置くものであった。
この工事を請け負った会社では、以前にも今回と同様な貯水槽を何ヵ所も施工していた経験から、天井部分に打設したコンクリートが固まる際には、ひび割れがおきることが判っており、その補修を災害発生当日に行うこととなっていた。
災害発生当日は、AとBがビニールシートと貯水槽の間に入りひび割れの補修をし、Cは地上で道具等を運ぶという作業分担であった。
作業現場は昨晩のうちに降った積雪が5cm程度あり、ビニールシートが隠れる状態でありそのまま貯水槽をビニールシートで覆った状態で午前10時30分頃から作業を開始した。
作業開始時には、まだ昨日に設置した練炭の火が残った状態であった。
作業開始後10分程度経過した際に、足場の上で作業していたBの動作がふらふらし出し、ビニールシートの外部に出ようとしたが、そのまま倒れて基礎面まで落下した。
Bの作業場所の反対側で作業していたAも、何となく体調がおかしく感じたために単管に腰掛けて休んでいたところ、Bが倒れて落下する音を聞き、基礎面まで降りてBの様子を見に行ったところ、倒れているBを発見すると同時に自分も倒れてしまった。
ビニールシートの外部で作業していたCが二人の異常に気が付き、基礎面まで降りて二人を救助した。
A、Bとも、救助後に入院し一酸化炭素中毒と診断された。
Cも軽い一酸化炭素中毒で入院したが、翌日には退院した。
Aは、以前にも同様な作業手順で貯水槽を施工していたが、夜間に積雪を伴うことがなく、自然の風により作業現場が換気される状態であったために一酸化炭素がビニールシート内部に滞留することがなかったが、今回は積雪によりビニールシート内が密閉状態になっていたために、練炭から生じた一酸化炭素が換気等の措置も講じていなかったためビニールシート内に滞留した。
原因
(1) ビニールシートに覆われた換気の悪い状態で練炭を使用したことにより、作業場の一酸化炭素濃度が高い状態になっていたにもかかわらず、換気を行わずに立ち入ったこと。(2) 練炭による一酸化炭素中毒発生の事例は知っていても、その危険性を認識していなかったこと。
(3) 体調の変化を意識しながら、そのまま作業を続けたこと。
(4) 作業状況を監視する者がいなかったこと。
対策
(1) 練炭を使用した際には、十分に換気を行ってから作業場に立ち入ること。(2) 作業者に対して安全衛生教育を徹底し、危険に対する認識を深め、安全意識の高揚を図ること。
(3) 一酸化炭素中毒の発生するおそれのある危険場所で作業を行う場合は、常時作業状況を監視する者を配置すること。
(4) 一酸化炭素中毒のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、作業者をその場から退避させること。