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労働災害事例

マンション地下ピットにおける有機溶剤中毒

マンション地下ピットにおける有機溶剤中毒
業種 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事
災害の種類 中毒
被害者数
死亡者数:− 休業者数:3人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.1015

発生状況

本災害は、マンション新築工事に関連して、1階床コンクリートの打設時の型枠支保工に使用した梁(口形鋼)及びその支柱(L字形鋼)が1階床下の配管用ピット(以下「地下ピット」と言う。)内にマンション完成後も残っていたことから、これらのさび止めのために塗装作業を行っていた下請け会社の作業者2名と元請の現場監督が有機溶剤中毒となったものである。
 有機溶剤中毒災害が発生した作業は、マンションの地下ピットの梁及びその支柱のさび止め塗装作業である。
 このマンションは災害発生時にはすでに完成状態であり、一部の入居者が引っ越してきている状態であったが、元請の判断により、強度的には不要であったが型枠支保工解体後もそのまま地下ピットに残る状態となっていた梁及びその支柱に塗装を施すこととしたものであった。
 作業方法は、キシレン20%程度を含有する塗料を、キシレン60%程度を含有するシンナーで希釈し、刷毛で塗ってゆくものであった。
 作業は災害発生当日の3日前から2名ないし3名で行われていたが、防毒マスクなどの呼吸用保護具や換気装置は全くない状態で作業が行われており、すでに初日に吐き気を催す作業者もいた。
 災害の発生した地下ピットは、6つのスパンに区画されており、1つのスパンの大きさは縦約6m、横約11m、高さ約1mであり、各スパンは45cm四方の通路で連絡されている。
 この地下ピットは、東から2番目のスパンに60cm四方のハッチが設けられており、ここから出入りが行える構造となっており、他には換気口として東から1番目のスパンに直径110mmの孔が2個設けられているだけであり、したがって、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)第2条第1項第1号に規定する「タンク等の内部」に該当するところの、「地下室の内部その他通気が不十分な屋内作業場」に当たるものである。
 災害発生当日は、地下ピットのハッチから最も奥のスパンの境界付近の塗装作業を下請け会社の労働者2名と元請の現場監督で行っていた。
 作業の指示は現場監督が行っていたが、現場監督も下請け会社の作業者2名とも有機溶剤作業主任者技能講習を修了してはいなかった。
 午前中の作業は順調に進行したが、昼休憩後に作業を続けるため地下ピットに入った3名が午後5時頃になっても出て来ないため、現場所長が確認のためにピット内に入ったところ、3名が意識不明の状態となっているところを発見し、これを救出した。
 その後、被災者に確認したところでは、昼休憩後から意識状況が鈍ってきており、午後4時に時計を確認した程度の記憶しかなかったとのことである。
 災害発生の翌日に災害発生現場の有機溶剤の気中濃度を測定したところ、エチルベンゼンが76PPM、キシレンが348PPMとなっていた。

原因

(1) 資格を有する(有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者)作業主任者を選任していなかったこと。
(2) 呼吸用保護具を着用させていなかったこと。
(3) 換気を行っていなかったこと。

対策

(1) 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者から作業主任者を選任すること。
(2) 呼吸用保護具を着用させること。
(3) 換気を行うこと。
 本件の場合のように、タンク等の内部で臨時に有機溶剤業務を行う場合、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)の規定による換気等のための設備と呼吸用保護具の措置については、
 [1] 有機溶剤の発散源の密閉する設備及び局所排気装置の設置を行わず、全体換気装置を設置した場合、呼吸用保護具として送気マスク又は防毒マスクを使用させること。
[2] 有機溶剤の発散源を密閉する設備、局所排気装置及び全体換気装置を設けない場合、呼吸用保護具として送気マスクを使用させること。
 の2つの方法がある。
 当該マンションのピット内は、各スパンを結ぶ通路となる部分の開口が45cm四方と狭く、また、出入り口から作業者の位置まで約25mあることから、送気マスクを使用させる場合には、送気が確実に行われるよう、ホースの管理に配慮する必要がある。
 防毒マスクを使用させる場合には、ピット内が防毒マスクの使用限界濃度以上にならないよう全体換気装置による換気等を行い、予想される作業環境中の有機溶剤の濃度に応じ、防毒マスクの吸収缶の除毒能力に十分余裕のある作業時間間隔でピット外に出て、吸収缶を新しいものに交換して作業を行う必要がある。