上水道配管工事における酸素欠乏症
業種 | 上下水道工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 上下水道工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.1013
発生状況
(1) 本工事は、地中配水管を住宅共用上水道施設である既設の貯水槽から隣接したポンプ室まで延長し、併せてポンプ室に給水ポンプを3基設置するものである。災害発生当日の作業は、延長する既設の配水管の埋設深さと工事施工現場付近に埋設されている高圧電線の埋設位置を確認するための試掘作業を5名の作業者で実施していた。(2) 午前7時30分現場事務所において、元請現場代理人から当日の作業内容の説明及び安全指示([1]ドラグ・ショベルの接触による災害防止、[2]土砂崩壊に対する注意、[3]高圧電線を傷つけることによる感電の防止)が行われた。
(3) 午前8時30分ころより、2名が現場でドラグ・ショベルにより高圧電線の位置確認のための試掘作業を開始した。また、他の2名は発注者監督官事務所で貯水槽工事における施工図面を確認した後、現場に向かった。
(4) 作業現場では、1名がドラグ・ショベルで試掘作業を行っていたが、下請現場代理人である被災者が見当らず、周辺をさがしたところ、5ヵ所あるマンホールのうち、1つの蓋が開いていたため、中を確認したところ貯水槽の底で被災者があお向けで倒れているのを発見した。
被災者は、埋設管の深さを確認しようとして、マンホールから貯水槽内に立ち入ったものと推定される。
(5) 貯水槽内の下請現場代理人を救助するため、貯水槽の換気を行うこととして他の作業者が送風機を探していたが、その間に元請現場代理人が周囲の制止を振り切って、マンホールから貯水槽内に入ったところ、貯水槽の底に墜落し2次災害となったものである。
(6) 緊急連絡を受けた消防署救急隊は、マンホールから貯水槽内の換気作業を3回にわたって実施したうえ、酸素マスクを着用して槽内に入り、2名を救助したが、2名とも翌日死亡したものである。
(7) 貯水槽のマンホールは、約1年4か月の間閉じられており、何らかの理由で、雨水が入り込み底にたまっていた。救急隊が救助にあたって実施した酸素濃度の測定では、酸素濃度が7%であったことから、水が長期間滞留するうちに槽内の酸素を取り込み、酸素欠乏状態になっていたと推定される。
(8) また、この現場には、酸素濃度測定器、換気のための送風機、保護具など酸素欠乏危険場所において必要な装備は準備していなかった。
原因
(1) 長期間密閉されたマンホール内に換気等を行わず立ち入ったこと。(2) 酸素欠乏症による事故の可能性を認識しながらも、換気等を行わないままで被災者を救助しようとマンホール内に立ち入ってしまったこと。
(3) 酸素欠乏危険場所における危険予知訓練、事故発生時の教育訓練が徹底されていなかったこと。
(4) 酸素欠乏危険場所での作業において必要な装備が準備されておらず、また作業の安全に関する指示が徹底されていなかったこと。
対策
(1) 長期間密閉されたマンホール内に入る場合は、酸素濃度の測定を行うこと。また、酸素濃度が低い場合は、換気等必要な措置を講じること。(2) 酸素欠乏症による災害が発生した場合は、速やかに消防機関に通報すること。また、救助のため立ち入る場合は、換気を行い、呼吸用保護具を着用するなど必要な措置を講じたうえで立ち入ること。
(3) 酸素欠乏危険作業を実施する場合は、酸素欠乏危険作業主任者を選任するとともに、作業者の教育訓練を徹底すること。
(4) 酸素欠乏危険作業を実施する場合は、酸素濃度測定器、送風機、保護具等必要な装備を準備すること。