災害復旧工事中における伐採した松に残留していた殺虫剤による中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.1007
発生状況
本災害に係る工事は土砂崩壊に伴う災害復旧工事であった。災害発生当日の作業は、主任技術者Aを含む3名で、地主が伐採後枝打ちした杉松の枝や雑木を現場で集積し、焼却処分を行うものであった。作業においては、まず午前8時30分より、Aの指示により、散在している松や杉の枝、雑木を焼却するため3ヵ所に集積し、続いてこれらの集積した枝等に順次火入れを行った。このうち2ヵ所目付近には、マツクイ虫駆助のために、玉切り後薬剤処理された松1本分が、ビニールシートで覆ったまま放置されていた。これについては、Aが焼却処分するために、覆ってあるシートをめくり玉切りされた松を取り出し、その時にすっぱい臭いを感じたものの、そのまま火の中に入れ燃やした。この松が燃え始めると、白っぽい煙が出ると同時に強い刺激臭が発生した。
その後Aは、12時まで焼却場所より約1mの隣接した場所でドラグ・ショベルに乗り、施工現場の崩土処理のために整地作業を行っていたが、その間、運転席の中で頭が痛くなり、目もチカチカしてきた。
この時、他の作業者2名は、それぞれ1ヵ所及び3ヵ所目の集積した枝等の場所で火の見張り番をしていたが、両者とも臭いは感じていたが、頭痛等はなかった。
その後昼食時に、Aは頭痛及び気分が悪かったが、午後1時より仕事を再開した。しかし、午後2時頃より、Aは気分が悪化し、嘔吐及び手足の脱力感が生じたため、午後3時頃、近くの診療所へ搬送され、午後5時頃、専門医がいる病院へさらに移送された。
病院では、
[1] 当日焼却した松等の量は多くなかったこと。
[2] 当日風が吹いていたこと。
[3] 他の2名の作業者には一酸化炭素中毒の症状は出ていなかったこと。
[4] 病院における血液検査の結果、CO−Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)の数値が低かったこと。
[5] 殺虫剤(カーバム剤)処理された松のビニールシートを開放したときから刺激臭を感じ、体調の変化も感じたこと。
などから、カーバム剤が主要な起因物と判断された。
なお、Aは本作業中、軍手、安全靴、ヘルメットは着用していたが、防毒マスクは着用していなかった。
原因
[1] 事前に薬剤の有害性等を確認しなかったこと。[2] 有効な保護具を着用せず、ビニールシートの開封、当該松等の焼却及び近接した場所でのドラグ・ショベルの運転作業を行ったこと。
[3] ビニールシートを開封後最低でも1週間経過し、薬剤の残留濃度が安全範囲に入った上で、焼却作業を行わなかったこと。
対策
[1] 事前に薬剤の内容物及び有害性等を確認し、安全な作業手順及び内容を決定し、作業者に周知した上で、当該作業を行わせること。[2] 防毒マスクなど、適切な保護具を着用させること。
[3] ビニールシートを開封後、薬剤の残留濃度が安全範囲に入った上で、焼却作業を行わせること。