建設中の防火水槽で、練炭を使用した9日後に槽内に入り一酸化炭素中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.1001
発生状況
災害の発生した工事はコンクリート製の防火水槽を新設する工事であり、工事を受注したS社は設計から施工までを一貫して行っていた。防火水槽は地下埋設式で、概ね直方体の形状であり、上部には2ヵ所のマンホール部(取水口)が設けられている。水槽の大きさは縦3.0m、横5.7m、高さ2.5mであり、マンホール部の直径は0.6mであった。
工事は、[1]水槽新設箇所の掘削、[2]底部の鉄筋の組立、[3]底部のコンクリート打設、[4]側壁及び上部工(天井)の鉄筋及び型枠の組立、[5]側壁及び上部工のコンクリート打設、[6]側壁及び上部工の型枠の解体、という工程で行われた。
この工事は寒冷地で行われたので、コンクリートが固まるまで凍結防止のための保温養生が必要であった。このため、側壁及び上部工のコンクリート打設後、槽内に練炭コンロを2個置いて燃焼させ、水槽全体にビニールシートを覆いかぶせて養生した。
打設の翌日及び翌々日は槽外で側壁外部及び上部工外部の型枠の解体作業を行った。
打設後3日目から8日目までは大雪のため作業は行われず、9日目に作業が再開され、この日の作業は、水槽内部の写真撮影と側壁内部及び上部工内部の型枠の解体であった。
まず、S社の現場代理人Aが作業者3名とともに防火水槽全体にかぶせてあったビニールシートのうち、上部工部分だけを取り外した。取り外し後、Aは一人でマンホール部から槽内に入り、約3分間かかって型枠の設置状況等の写真を撮影した。撮影後、Aは水槽の外に出たが、撮影中に気分が悪くなったことから、作業者3名に「気を付けて解体作業を行うように。」とだけ告げ、他の用務のため会社事務所に戻った。
Aが帰社した後、作業者3名は解体作業の手順について打ち合わせをして、3名のうちBとCが槽内で型枠を解体し、解体したパイプサポート等の型枠材を槽外のDがマンホール部から受け取り、現場近くに駐車しておいたダンプカーの荷台に載せることになった。
BとCが槽内に入ってから7〜8分後、Dがダンプカーに型枠材を運び荷台上で整理していた時、槽内から声が聞こえたのでマンホール部に戻り水槽内部をのぞいたところ、うつ伏せに倒れているBとCを発見した。
発見後、Dは急いで槽内に入り、BとCを一人ずつ順に槽外に救出した。
災害発生時、防火水槽は上部のマンホール部2ヵ所が開放されているだけで外気による換気はほとんどなかったため、練炭の不完全燃焼により発生した高濃度の一酸化炭素が槽内に滞留していた。なお、工事現場には、送風機等の換気装置及び呼吸用保護具は備えられておらず、また槽内で作業を行うに際して一酸化炭素濃度及び酸素濃度の測定は行われていなかった。
原因
[1] 槽内で練炭が不完全燃焼して一酸化炭素が発生し、これが滞留していたこと。[2] 工事を監督する責任のある現場代理人が、自ら気分が悪くなったことにより槽内の危険性を察知していたにも関わらず、槽内の換気、呼吸用保護具の使用の指示等の安全のための措置を行うことなく作業者を槽内に立ち入らせたこと。
対策
[1] コンクリートの保温養生には、極力、練炭の使用を避け、電気器具を用いるなど作業方法を改善すること。[2] 練炭の使用にあたっては、燃焼により発生する一酸化炭素による中毒及び酸素欠乏の危険性について作業者に十分な教育を行うこと。
[3] 水槽内部等の自然換気の不十分な場所で練炭を使用する時には、当該場所を立入禁止とし、その旨を掲示等で作業者に周知すること。
[4] 練炭を使用した場所にやむを得ず作業者を立ち入らせる場合には、事前に十分換気を行い、かつ、一酸化炭素等の濃度を測定すること等により危険のないことを確認するとともに、必要に応じて作業者に適切な呼吸用保護具を使用させること。