木造家屋改築工事に伴うカビ取り作業による物性疾患
業種 | 木造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 木造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.999
発生状況
災害発生当日の作業は、木造平屋建住居の増改築工事に伴い、既設建物の木材部分のカビによる汚れを取る作業であった。作業方法としては、市販の漂白・カビ取り用の薬剤を水で8〜9倍に薄めたものをハケを使用して塗ることとなっていた。使用した薬剤は漂白・カビ取り用として業務用に市販されている亜塩素酸ナトリウムの23%水溶液であり、酸化力が強く、使用説明書には、使用法として水で2〜10倍に薄めて使用すること、使用上の注意として防毒マスクをすること、ゴムかビニールの手袋をしてハケを使うこと、酸類と混合すると二酸化塩素を発生させることなどが書かれている。
災害発生当日の作業は午前8時20分頃から始められた。
午前中は被災者他1名で屋内の壁、柱等のカビ汚れ取りを行った。この時は作業手順のとおり、水で8〜9倍に薄めた薬剤をハケを使用して塗っていた。
午後0時15分から午後1時15分まで休憩を取り、午後の作業を行った。
午後からは作業の手伝いとして、さらに1名が加わり、1名は午前に引き続き屋内での作業を、被災者と手伝いの1名が屋外での作業を行うこととなった。
屋外の作業は、主に窓枠や軒などのカビ汚れが対象であった。この作業についても、薬剤を水で8〜9倍に薄めてからハケを使用して塗っていく方法で行うこととなっていた。
しばらくして、軒部分の作業を行っていた被災者が、薬剤の原液をそのまま薄めずに動力噴霧器を使用して吹き付ける方法に作業方法を変更した。
軒の裏側は被災者の背の届かない高い位置であり、図のように脚立を使用して作業したため、噴霧器を顔面上にもってくることとなり、薬剤の霧が顔面にかかる状態であった。
被災者は長袖・長ズボンの作業服に軍手・ガーゼのマスクを着用していたが、ガーゼのマスクは午後の作業で薬剤によりすっかり濡れてしまった。
作業は午後3時頃30分程度休憩し、午後7時ごろ終了した。
被災者は午前の作業中から咳が出はじめてきており、その日の作業終了後は咳が止まらなくなり、その後通院加療のため、休業することとなった。
原因
[1] 薬剤(亜塩素酸ナトリウム)は水で希釈してハケで塗布すべきところを作業標準を守らず、薬剤の原液を噴霧して使用したこと。[2] 適切な呼吸用保護具等を使用しないで作業したこと。
[3] 使用する薬剤(亜塩素酸ナトリウム)の危険性についての知識がなかったこと。
対策
[1] 作業標準、使用説明書の内容を遵守すること。[2] 適切な呼吸用保護具、保護衣を使用すること。
[3] 作業に使用する薬剤等については、あらかじめ、危険性等を確認し、作業者に教育すること。