ガス管撤去作業による酸欠死
業種 | 建築設備工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築設備工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.996
発生状況
災害発生場所付近は、約1,000戸がLPGガスの供給になっているが、LPGガス集中貯蔵庫より地下埋設配管を経由し各家庭へと供給されている。災害の発生したガス管撤去作業は、通常次の手順で行われる。1 ガス管の位置の確認
2 掘削(ガス管埋設深さ+10cm)
3 送気マスクの装着
4 ガス管を専用カッターで1カ所切断
5 切断箇所をテープで覆いガス止め
6 ガス管を1カ所目から50cmほど離して切断
7 ガス管撤去
8 ガス突出防止のため、ウエス又はゴム栓で仮止め
9 継手の装着
10 ガス漏れ検査
11 埋め戻し
災害発生当日、ガス管撤去作業は5件予定されており、被災者及び同僚作業者の2名で作業を行う予定であったが、同僚が休暇を取り、代替作業者が到着するまで被災者1名での作業となった。
作業は午前9時ごろから始まり、掘削位置の確認の後、縦70cm、横80cm、深さ150cmに掘削したが、次の手順である送気マスクの装着をせずに掘削穴に入り、ガス管の1カ所目を専用カッターで切断したが、土圧によりガス管がずれ、普段より多量のガスが噴出した模様で、切断面にテープを巻いてガスを仮止めする作業に手間取り、そのうちに掘削穴の中にLPGが充満して酸素欠乏状態となり、気を失った。
気を失ってからの経過時間は不明であるが、当該工事の行われた住宅の住人が掘削穴の中に倒れている被災者を発見し、被災者は救急車で病院に運ばれたが数日後に病院で死亡した。
ガスマスク・送風機・発電機は被災者の運転してきた車中に積んであったが使用されていなかった。
なお、被災者は第1種酸素欠乏危険作業主任者及び第2種酸素欠乏危険作業主任者の資格を有するほか、親会社の教育を通じて、酸素欠乏の有害性について十分な認識を持っていたはずである。しかし、送気マスクを装着せずに単独作業を行ったのは、当日5件の作業が予定されており、時間的に余裕がなかったために通常の作業手順に違反したとも考えられる。
原因
作業の際にガスの元栓を止栓する等のガス遮断措置をとらなかったこと。また、被災者の所属する事務所の作成した「ガス工事仕様書」には、「ガスの噴出を伴う工事は、ガスマスク(送気マスク)を装着するとともに単独作業を禁ずる。」とされているのにもかかわらず、マスク装着及び単独作業の禁止の両方とも違反していたこと。
対策
1 ガス管の取付け、取外し作業を行わせる場合は、単独作業を行わせないこと。また、空気呼吸器の使用について短時間であっても徹底すること。2 作業の際に、できるかぎり元栓を止栓する等のガス遮断措置をとること。
3 ガスを送給する配管を取り外し、又は取り付ける作業に作業者を従事させるときは、配管を取り外し、又は取り付ける箇所にガスを確実に遮断するか、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18パーセント以上に保つように換気し、又は作業者に空気呼吸器を使用させること。
4 作業標準が形式的な文書にとどまらず、作業者が作業標準を完全に周知し、いかなる場合にもその作業標準を順守するよう徹底指導すること。