農業用制水弁室にて一酸化炭素中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.993
発生状況
本災害は、農業用水路の制水弁を収容する地下ピット内において、作業者Aが排水のためエンジン付きポンプを入れて稼働させていたところ、約1時間後に気分が悪くなり外へ出ようとした際、意識を失い倒れたものである。本作業は、農業用水路の敷設及び制水弁2機(1・2号機制水弁室)の設置を行うものであった。
作業手順としては本来、Aは、当該作業を行う予定ではなく別の作業者Bが1人で排水用ポンプを1号機制水弁室にセットし、いったん外に出て排水終了後再度ポンプを取り出すことになっていた。制水弁室は、縦3.4m×横2.9m×深さ2.5mの地中に埋設されたピットで、気積は約24m3であった。外気に接する箇所は、直径0.6mの上部出入り口とタラップ付近にある直径8cmのガス抜きの穴であるが、出入口は室内での作業がある時以外は閉められていた。
災害発生当日、室内には水位約5cmの水が溜っていた。ポンプの給水側のホースの長さは約3mしかなく、室内にエンジンポンプを入れないとホースの先が水面まで届かないので、Bは、近くで作業をしていたAに室内に降りてエンジンポンプをセットする作業を手伝うように頼んだ。10分程してBは、ポンプを稼働させ排水されるのを確認してからAに「早く外に出るように」と言い残して、他の作業箇所へ向かった。
ところがAは、ホースの先が軽いため水面に浮いて吸水できなくなるのではないかと考え、室内で約1時間ホースの先を押さえていたところ、眼の痛みと息苦しさから酸欠の危険を感じたため、エンジンポンプのスイッチを切って、外に出ようとタラップを2、3段登ったところで意識を失い倒れた。
Aが倒れた直後、Bが1号機制水弁室のふたを閉めるために戻ってきたところ、Aが倒れているのを発見し、他の作業者に連絡し、救出した。Aは呼吸停止状態であったが、人工呼吸により自力で呼吸できるようになり、応急処置後、救急車で病院に運んだものである。
原因
自然換気が不十分な制水弁室内で、排気ガスによる健康障害を防止するための換気等を行わずに内燃機関を使用させたことにより制水弁室内の気中の酸素が消費され、二酸化炭素及び一酸化炭素が増加し、このため、酸素欠乏に一酸化炭素中毒が加わり、被災したものと考えられる。対策
自然換気が不十分な所では、排気ガスによる健康障害を防止するための換気等を行わない限り内燃機関を使用しないこと。制水弁室内等の酸素欠乏危険場所での作業を行わせる際は、酸素濃度18%以上を保つよう換気を行わせること。
第1種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、適正な作業方法の決定・作業の指揮及び酸素濃度の測定等を行わせること。
制水弁室内等酸素欠乏危険場所で作業する者に対して、第1種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は酸素欠乏症に関わる特別教育を実施すること。