医薬、農薬中間原料製造設備の撤去工事中の中毒
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.991
発生状況
被災者の所属する事業場は、事業者と従業員合わせて3名の小規模事業場であり、今回の災害では事業者も被災した。今回の工事は、オルトクロロアニリンの製造工程における循環ポンプが故障したため、修理のためこれを装置から取り外すものであり、1日で済むものであった。
ポンプ取外し作業が開始される前に、発注者によりポンプ及び配管中の残留物(オルトクロロアニリン、オルトクロロニトロベンゼン等)がポンプの前後に取り付けられたドレーンから排出され、更に配管に窒素ガスを通して配管内の水素ガス及び配管壁に付着している可能性のある残留物の除去が試みられた。水による配管の洗浄は行われなかった。
ポンプ取外し作業は、元請けの工事担当者の指揮のもとに当該事業場の事業者1名及び作業者2名により行われたが、ポンプ出口側のフランジを外したとき、ポンプ内等に残留していた液(オルトクロロアニリン、オルトクロロニトロベンゼン等)が1lほど流出し、被災者らの衣服に付着した。
不浸透性の保護衣・手袋・履物、保護眼鏡、呼吸用保護具等について元請けからの着用の指示は無く、被災者らは労働衛生保護具を何も着用していなかった。
付着してから着替えたり体を洗ったりしないまま、30分ほど過ぎて、1名の作業者が貧血状態になり倒れ、2時間ほど過ぎてもう1名が嘔吐し、嘔吐してから3時間ほどして倒れた。一緒に働いていた残り1名も、軽い嘔吐症状を示し、入院した。
本災害はオルトクロロニトロベンゼンの蒸気を吸入したほか、皮膚からも吸収し中毒に至ったものと考えられる。
原因
[1] 発注者はこの物質の有害性については多少認識していたものの、過去に中毒の経験が無かったことから、発注に当たって次のような管理が不充分となっていたこと。 | ||
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[2] 被災者らは、労働衛生保護具(不浸透性の保護衣・手袋・履物、保護眼鏡、呼吸用保護具等)を何も着用していなかったため、流出した液が容易に皮膚及び肺から吸収されたこと。 [3] ばく露した際、作業を直ちに中止し、汚染された衣服等を脱がせ付着部を洗浄する等の措置をとらなかったこと。 |
対策
[1] 有害物質製造設備の修理・点検等を行う場合は、ポンプ・配管等の設備の内部を水等により充分洗浄すること。洗浄は工事施工者のみならず、発注者においても責任を持って行うこと。[2] 必要な労働衛生保護具を着用すること。
[3] 事前に安全衛生教育を行い、作業に関わる物質の性状、危険性、有害性等を充分作業者に周知させ、災害防止対策を徹底すること。この場合も、施工者に対して、発注者がこれらの情報を充分周知させること。
[4] ばく露した場合は、直ちに作業を中止し、汚染された衣服等を脱がせ、付着部を洗浄する等の措置をとるとともに、直ちに医師の処置を受けること。