断熱材の貼付け作業により気化した溶剤が爆発
業種 | 建築設備工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築設備工事 | ||||
災害の種類 | ガス等の爆発 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.990
発生状況
本災害は、校舎建設工事現場において、暖房用コンクリートダクトの内側に接着剤で断熱材を貼る作業を行おうとしていたとき、2日前に行った同じ作業で使用してダクト内に気化していた接着剤の溶剤が爆発し、付近にいた1名が火傷により死亡したほか、付近にいた関係作業者7名が負傷したものである。本工事は、小学校(3階建て)を建設する工事であり、死亡した甲の所属するA建築は1次下請けとして、校舎の暖房用コンクリートダクトの内側に断熱材を貼る作業を負け負っており、甲は営業担当として、工事に立ち会っていた。
この暖房用ダクトは、地下の機械室につながる横ダクトおよび、それに接続される縦ダクトから構成され、縦ダクトは1〜3階それぞれに設置される空調ダクトにつながるが、施工途中であったため、横ダクトの機械室側は閉鎖されており、縦ダクトの3階部分のみが開口部という構造になっていた。
第1回の断熱材の貼付け作業は、災害発生日の2日前に横ダクトから開始され、作業者3名がポリスチレンボードに接着剤を塗り、ダクト内壁面に貼り付けるという工程を繰り返し行った。使用された接着剤はボード側に塗布する第1剤がノルマルヘキサンを約20%含有し、ダクト側に塗布する第2剤がメタノールを約40%含有しており、作業中は、換気用ポータブルファンによって換気を行っていた。
しかしながら、作業終了後は、ダクト内の換気については特に配慮されず、1階のドアは閉じられ、ダクト内には使いかけの接着剤の缶が放置されたままになっていた。
作業の翌日は、別の場所での作業があったため、現場はそのまま放置された。
災害発生当日、甲は作業現場の様子を見に行くと言ってダクト内に入っていき、しばらくして爆発が発生した。この爆発により甲はダクト内で被災、死亡し、一階にいた7名が負傷した。爆発は、ダクト内に滞留していたノルマルヘキサン及びメタノールの蒸気が何らからの着火源により着火し発生したものとみられる。
着火源は通常なかなか特定できるものではないが、現場の状況から衝撃火花、静電気、ライターの火などが考えられる。
原因
[1] 作業者に対し、有機溶剤の取扱い上の危険・有害性について教育を行っていなかったため、作業者が有機溶剤取扱いに当たって必要な知識を十分に持っていなかったこと。[2] ふたの一部が開いたままの溶剤の缶をダクト内に放置したままにしていたこと。
[3] 作業開始に当たって、前もってダクト内の換気を行わなかったため、ダクト内に有機溶剤の蒸気が滞留したままになっていたこと。
対策
[1] 作業者に対し、有機溶剤を用いることによる爆発・火災の防止のための教育を実施すること。[2] 有機溶剤の入っている缶を保管する場合は、ふたを締めるなど、内部の溶剤がみだりに蒸発することのないようにすること。
[3] 有機溶剤による爆発・火災を防止するため、作業開始前にダクト内の換気を行うとともに、作業中においても継続して換気を行うこと。
[4] 爆発・火災のおそれのある場所においては、アーク溶接、火気の使用など、その原因となりうるようなことは行ってはならない。
[5] また、上記措置を講ずるとともに有機溶剤作業主任者の選任・職務の遂行、教育の実施等有機溶剤中毒予防のための措置もあわせて実施すること。