化学プラント内の設備改築工事で配管内の薬品が漏洩し、作業者に付着して中毒発生
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.989
発生状況
本災害は、既設の化学プラント内で設備改築工事を行っていた作業者に、作業場所付近の配管からわずかに漏洩した化学薬品(フェニルヒドラジン)が付着し、これが原因となって中毒を起こしたものである。被災者の所属していた事業場は、設備工事を専門に行っている作業者数8人の小規模事業場であり、今回は化学プラント工場から発注された設備改築工事の一部を請け負っていた。災害発生当日、被災者は1人で午前9時から午後5時まで、途中に数回休憩をはさみながら、屋外の既設プラントに隣接する場所でコンクリートの打設作業を行った。被災者は、作業中に背中にピリッとした痛みを感じたが、特に気にせず、そのまま定時まで仕事を続けた。
作業終了後、被災者が現場詰所に行くと、元請の現場責任者は被災者の作業服から異様なにおいがするのに気づいた。現場責任者が工場の事務所に行き事情を説明したところ、作業が行われた場所と物質のにおいから、付着物はフェニルヒドラジンであることが判明した。工事側が湯で体を十分に洗うように現場責任者に指示したため、これを受けて現場責任者は被災者に構内の風呂に入って体を洗うように伝えたが、被災者は着替えを持参していないという理由からその指示には従わず、自社に立ち寄った後帰宅し、入浴した。
翌日、工場側の指示により被災者が病院で診察を受けたところ、急きょ入院し、治療を受けることとなった。
被災者がフェニルヒドラジンにばく露したのは、打設作業の場所のすぐ近くで、工場側がフェニルヒドラジン製造プラントのスチーム洗浄のため、災害発生当日の午後1時頃に配管のフランジを緩めており、そのためそこからフェニルヒドラジンを含む液体が微量ずつ漏洩し、それが管を伝わって垂れ、被災者の作業服に付着したためである。なお、工場側の作業者がフランジを緩めた際には漏洩は認められなかったため、スチーム洗浄の作業を実施していたとのことであったが、災害の翌日、再度詳細に調べたところ、30秒に1滴の割合で液体が垂れていることがわかった。
このような工事を行う場合、作業内容を前日に工場側へ連絡し、許可を得た上で工事に着手することになっていたが、このコンクリート打設作業については事前の連絡がなされていなかったものである。
原因
(1) 打設作業と工場側が行うスチーム洗浄作業との調整が行われなかったこと。(2) 配管のフランジを緩めた際の内容物の漏洩の有無の確認が不十分だったこと。
(3) 現場責任者、被災者ともにフェニルヒドラジンの有害性についての認識が不十分であったため、ばく露してからの処置が遅れたこと。
対策
(1) 操業中の工場内で工事を行う場合には、あらかじめ発注者側と受注者側とで作業場所、作業内容等について十分に連絡をとり、施工時期等について検討を行うこと。(2) 有害物を取り扱う設備の付近で工事が行われる場合には、発注者側はあらかじめ当該有害物の種類、その有害性、ばく露した場合の症状、応急措置等についての情報を受注者側に提供するとともに、必要な場合には一定の場所について立入り禁止等の措置をとること。