配水池タンク内の防水塗装中、換気装置の燃料切れにより中毒になる
業種 | 上下水道工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 上下水道工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.985
発生状況
被災した作業者A、Bの所属する事業場は、主として建設現場における塗装工事を請け負うところであり、災害が発生した現場には、一次下請け業者として入場していた。工事内容は、配水池タンク内面に防水塗装を施すもので、塗装は3層塗で下塗りには無溶剤塗料を使用し、中塗り・上塗りにはエポキシ樹脂塗料を使用することになっていた。タンクは高さ7.8m、直径16.8mの円筒形で上部はドーム型をしており、タンク内部への入り口はタンク上部に設置された内径85cmのマンホールだけであった。
災害発生前日までにタンク内天井部分と壁面上部(床面から約1.5m上方部分)は上塗りまで、床面と壁面下部は中塗りまで終了していた。
災害発生当日、午前9時30分頃から作業者A、Bの2名でタンク内壁面下部の上塗りを開始した。上塗りに使用した塗料はエポキシ樹脂(成分トルエン20%、キシレン20%)と硬化剤(成分トルエン40〜50%、ブタノール60〜70%)を2対1に混合して使用するるもので、標準塗布量は250g/m2であった。塗料の混合はタンクの外で行い、缶に小分けしてからタンク内部に持ち込み、柄付きローラーで塗装を行った。作業中はポータブル換気装置(ファン能力70m3/分)をタンク外に置き、フレキシブル風管をタンクの底まで伸ばしてタンク内に送風するとともに、A、Bとも有機溶剤用防毒マスクを着用して作業を行った。換気装置の電源は、ガソリン発電機を使用していた。作業姿勢は、床面から高さ1.5mまでの塗装であったため両名ともしゃがんだ体勢で作業を行った。壁面を約30m2(長さ20m×高さ1.5m)塗装したところで午前中の作業を終了した。
12時から1時間昼食を取った後に引き続きタンク内壁面の塗装作業を開始した。作業方法としては午前中と同様、換気装置を作動させ、保護マスクを着用して行った。しかし、作業開始して15分ぐらいたってA、Bとも意識を失って倒れ、翌日タンク内に倒れているのを同僚に発見された。救出後、両名とも意識は回復したが有機溶剤中毒と診断され入院加療となった。
発見時、換気装置はガソリンを消費し切っており、送風は止まっていた。(スイッチはONの状態となっていた。)
なお、作業者A、Bの所属する事業場には、有機溶剤作業主任者として選任されていた主任Cがいたが、災害発生当日は別の現場にも塗装作業があっため、主任Cはその日の朝に一度だけ災害発生現場に来ただけであった。
原因
(1) 全体換気装置を作動させるために使用した発電機の燃料が不足していたことを認識していなかったこと。(2) 有機溶剤作業主任者が配置されていなかったこと。
(3) 元請を含めた安全衛生管理体制が不十分であったこと。
(4) 有機ガス用防毒マスクを着用していたが、マスクの吸収缶の破過時間を過ぎて作業したこと。
(5) 換気方法としてタンク内に送風しか行わなかったこと。(有機溶剤は空気より重いため送風だけでは不十分)
対策
(1) 有機溶剤作業主任者に、その職務を徹底して行わせること。(2) 換気装置、保護マスク等の責任分担を定め、保守点検を行わせること。
(3) 関係作業者に全体換気装置、保護マスク等の性能等に関する教育を十分に行うこと。
(4) 安全衛生管理体制を整備すること。特に、作業内容、作業人員につき元請との連絡調整を密にすること。