病院新築工事でコンクリート急結剤により薬傷
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 分類不能 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.983
発生状況
被災者Aは、B建設会社が請け負った病院新築工事において、掘削された箇所の土留めの状況確認のため、土留め軸力計及びゆがみ計の計測作業をすることを担当業務としていた。災害発生当日の午後3時20分頃、Aはいつものように現場事務所1階に置かれている計測用端末測定機及び記録用ノートを持って、土留め軸力計及びゆがみ計の設置場所に出向いた。
Aは、軸力計及びゆがみ計の扉を開き、端末側定器を接続して、測定値を記録用ノートに記載する作業を行った。その際、作業場付近に設置されていたコンクリート吹付用急結剤供給設備(長さ120cm、幅40cm、高さ72cm)に寄り掛っていたところ、急結剤供給設備の表面に急結剤が洩れていたために、それがAの作業ズボンに浸透し、皮膚まで達した。Aは、それに構わずそのままの姿勢で作業を継続した。
計測作業終了後、Aは下半身に異常を感じたにもかかわらず、大したことはないと思い何ら処置を講ずることなく社員寮に戻ったが、午後7時頃入浴をしようとした際に、身体の一部がただれており、触れると痛みを感じることがわかった。
翌日、病院で治療を受け、数日間は通院しながら仕事を続けていたが、その後、入院治療を受けることになった。
災害要因となったコンクリート吹付用急結剤の成分及びその含有量は次のとおりであった。
アルミン酸カリウム 10〜30%
炭酸カリウム 10〜30%
トリエタノールアミン 10%以下
グルコン酸ナトリウム 1%以下
水 それ以外
主成分であるアルミン酸カリウム、炭酸カリウム及びトリエタノールアミンはいずれもアルカリ性物質であるが、計測作業の直接の監督者及び被災者Aは、急結剤の有害性に関する知識は全くなく、このため、Aは耐アルカリ性の保護衣等を着用していなかった。
原因
(1) 急結剤を持ち込んだ業者が、その有害性等の情報を工事関係者に周知していなかったこと。(2) 被災者は、アルカリ性有害物と接触したとの認識がなかったため、水洗い等の事後処置を講じなかったこと。
(3) 急結剤供給設備表面に洩れ出ていた急結剤について、立入禁止とする、ビニールで覆う等の接触防止のための措置を講じていなかったこと。
対策
(1) 有害物が持ち込まれる際には、受入事業関係者は持ち込んだ業者からその有害性等の情報を把握し、関係作業者に周知すること。(2) 有害物を取り扱う設備は、その有害物をなるべく外部に洩らさないようなものとし、それが困難な場合には、有効な有害物との接触防止対策を講ずること。
(3) 事業者は、有害物に接触する恐れのある作業に従事する作業者に、保護衣等を着用させるとともに、万一接触した場合の応急処置等についても関係作業者に周知させること。