河川浄化施設のマンホール内で酸欠死
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.981
発生状況
本災害は、河川の浄化施設工事現場において、仕上げ作業のためマンホールへ立ち入った作業者Aが、酸素欠乏により意識を失い水の溜った槽内へ転落し、また、Aを助けようとしてマンホールに立ち入った作業者Bも同様に被災し、ともに死亡したものである。本施設工事は、河川に流れ込んでいる支流の水を途中で浄化した後、河川に流れ込ませることにより、河川を浄化する施設を建設するものであった。河川と支流の合流口の河川敷に設置された同施設は、全長約270m、幅約40mに渡り、河川敷の地下に埋設されており、その間に点検口として16カ所のマンホールが点在していたものである。本工事は約1年半の工期を経てほぼ完成真近の状態にあった。
AとBの所属するK工業(株)は、本工事に際し掘削、雑工事を担当しており、災害発生当日はAとBの2名を含む3人が当現場にて、発注者による完成検査を控え、仕上げ工事としてマンホールのふたの開閉確認及びマンホール口のゴムパッキン取付け等を行う予定であった。
K工業(株)の3名は午前7時頃に現場に到着。作業指揮者であるAの指示によりマンホールの開閉確認及びゴムパッキンの取付けが行われた。午前10時頃、ふたの開かないものが2カ所あったので、移動式クレーンを使ってこれらのマンホールのふたを開けることにした。作業は、AとB、移動式クレーンのオペレーターの3名で行われ、ふたはクレーンによってまもなく開かれた。Aは、開けられたマンホールの中をしばらくのぞきこんでいたが、Bと少し会話を交わした後、その中へ入っていった。移動式クレーンのオペレーターは、Aがマンホールに入った直後にその場を立ち去っていった。
午前11時ごろ、一次下請けの技師が、AとBの姿が見えないことに気付き、現場付近を捜し始めた。しばらくして、AとBが入っていったマンホールの中にヘルメットが浮いているのを見つけ、元請を通じ警察、消防署へ連絡した。その後、レスキュー隊が到着し、マンホールに溜っていた水の底に沈んでいた両名を発見し救出したものの、数時間後に死亡した。
AとBの救出後、災害が発生したマンホールと同じ広さと構造を持つ他の密閉されていたマンホール内の酸素濃度を測定したところ、水面近くの最深部において6.0%しかなかった。
なお、当マンホールは、労働安全衛生法施行令別表第6に掲げられた酸素欠乏危険場所第3号の2(雨水、河川の流水又は湧水が滞留しており、又は滞留したことのある槽、暗きょ、マンホール又はピットの内部)に該当する。
原因
(1) 酸欠危険場所であるにもかかわらず、酸素欠乏等危険作業主任者の選任を行っていなかったこと。(2) 酸素濃度の測定をしていなかったこと。
(3) 換気をしなかったこと。
(4) 酸素欠乏症危険作業に係る特別教育を実施していないこと。
(5) 空気呼吸器等の保護具を備え付けていなかったこと。
対策
(1) 酸素欠乏危険場所に立ち入る場合には、作業開始前に酸素濃度の測定及び換気を行うこと。(2) 作業者が、必要に応じて使用出来るよう、空気呼吸器等を備え付けて置くこと。
(3) 作業主任者を選任し、作業者の指揮その他の職務を行わせること。
(4) 作業者に特別教育を実施し、酸欠の危険性等について十分理解させること。