建物改修工事における塗装作業で有機溶剤中毒
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.974
発生状況
被災した塗装工の所属する甲社は、主に建設工事において塗装の業務を請け負う会社で、災害の発生した建設工事は、旅館の一階駐車場から二階勝手口に登る階段室の天井及び壁をローラーで塗装する業務であった。災害発生当日朝、甲社工事部長が被災者に現場名、施工箇所を指示した。
午前9時頃から被災者他1名は、階段室の塗装しない箇所をビニールで囲い、足場を設置した。午前10頃から被災者1名で、階段室の天井及び壁をローラーを使用して塗装作業を開始した。
階段土間北西壁面の一部を塗装し、階段土間上部の天井を塗装作業中意識不明になった。午前11時頃、同僚が作業内容を聞くため、階段室に行ったところ、被災者が階段土間にうつぶせになって倒れているのを発見し、救急車で病院へ搬入した。
災害発生時刻は、被災者が午前10時頃から塗装作業を開始したこと、塗装した箇所から塗装に要する時間が約20分から30分ぐらいであることから午前10時20分から30分頃と推定される。
被災者が使用していた塗料に含まれる有機溶剤の成分は、トルエン40〜50パーセント、キシレン30〜40パーセント(トルエル、キシレンとも第二種有機溶剤)である。使用された塗料の量は30分間で2.5kgであり、トルエン、キシレンの消費量は、それらの重量濃度をそれぞれ40パーセント、30パーセントとすると、1.0kg、0.75kgとなる。また階段室の気積は12m3である。塗装に使用した塗料中に含有される有機溶剤が全量蒸発し、階段室内に均一に滞留、拡散したとすると、トルエン、キシレンの気中濃度は計算上は、それぞれ約22,000PPM、約15,000PPMとなり、非常に高濃度であったことが推定される。
トルエン、キシレンの管理濃度は、ともに100PPMであることを考慮すると、災害発生時の作業場の空気環境は、きわめて危険な状態であったことが想定される。
原因
1 通風が不十分な屋内作業場において、全体換気装置による換気を行わずに有機溶剤業務を行ったため、階段室内に高濃度の有機溶剤蒸気が滞留したこと。2 有機ガス用防毒マスクを使用しなかったこと。
3 有機溶剤作業主任者を選任しておらず、適切な作業方法の決定、作業指揮がなされていなかったこと。
4 有機溶剤業務に従事する作業者に対して、有機溶剤等の有害性及び取扱い方法等に関する労働衛生教育を実施していなかったこと。
5 安全衛生推進者が選任されておらず、安全衛生管理が不十分であること。
対策
1 通風が不十分な屋内作業場において、全体換気装置による換気を十分に行うこと。2 有機ガス用防毒マスクを使用すること。
3 有機溶剤作業主任者を選任し、作業方法を決定し、作業指揮を行わせること。
4 有機溶剤業務に従事する作業者に対して、有機溶剤等の有害性及び取り扱い方法等に関する労働衛生教育を実施すること。
5 安全衛生推進者を選任し、安全衛生管理体制の充実を図ること。