木造建築物の塗装工事中におきた有機溶剤中毒
業種 | その他の建築工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 木造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.971
発生状況
本災害は、個人宅である木造建築物の新築工事に伴う、玄関部の吹き抜け部分の内壁塗装工事中に起きたものである。玄関の吹き抜け部分は、たてよこ各々1.54m、高さ9mで、作業のための内部足場(丸太足場で作業床は4段)が組立てられていた。
災害発生日の前日、作業者AとBは、下地塗り作業を行った。なお、この下地剤には有機溶剤は含まれていなかった。災害発生日には、午前8時より、Aが一人で、有機溶剤を含有している塗料を用いて、塗装作業を開始した。同作業は、ローラーを使用しての手塗り作業を2回繰り返す作業である。午前9時ごろ、1回目の塗装が終ったので、Aは、約30分の休憩をとった。午前9時30分頃、Bが出勤してきたが、塗装作業ではなく片付け作業にとりかかった。Aは2回目の塗装作業を最上部より開始した。約半分塗り終えた午前11時15分頃、Aは意識を失い、3段目の足場上で倒れた。下にいたBは、Aを地面に降ろそうと足場に上がったところ、めまいを覚え意識を失った。2名は、吹抜け部分の窓より同災害を目撃したタイル職人により、救助され病院に収容途中に意識を回復した。
なお、使用していた塗料は、[1]合成樹脂エナメル塗料(トルエン20〜30%含有)、[2]ラッカーシンナー(トルエン60〜70%含有)を2:1に混合した第2種有機溶剤であった。吹き抜け部分には、窓はあるものの全て閉じた状態で作業していたので、自然換気は期待できず、また、全体換気装置は設けられていなかった。
原因
1. 作業者Aは、有機ガス用防毒マスクを着用していたが、マスクの能力を超える高濃度のガスにばく露されたこと。また、作業者Bは、無防護でAを救出しようとしたこと。2. 全体換気装置を設けて換気を行っていないこと。
3. 有機溶剤作業主任者を選任しておらず、作業の安全についての検討がなされていないこと。
4. 事業主の有機溶剤の有害性についての認識が不十分であり、作業者に対する有機溶剤取扱い上の注意事項、中毒発生時における処置等の安全衛生教育を行っていないこと。
対策
1. 屋内作業場で、塗装作業を行う場合には、有効な全体換気装置を設けるとともに、従事する作業者には、防毒マスクを使用させること。2. 屋内作業場における、有機溶剤を用いる塗料作業には、有機溶剤作業主任者を選任し、汚染防止のための換気方法、作業方法等を事前に検討すること。
3. 作業者に、有機溶剤の有害性、取扱い上の注意事項及び中毒発生時における処置等の安全衛生教育を行うこと。