職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

井戸内の汚水にエンジンポンプを使用したために発生した一酸化炭素中毒

井戸内の汚水にエンジンポンプを使用したために発生した一酸化炭素中毒
業種 その他の土木工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 その他の土木工事
災害の種類 中毒
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.963

発生状況

本災害は、一般家庭の井戸の改修工事において、工事終了後、井戸の底にたまった汚水を排水する際に井戸の内部でエンジンポンプを使用したために、点検に入った作業者が一酸化炭素(CO)中毒となったものである。
 被災者Aの所属する甲工業は、一般土木工事を主として行う事業者で、その他に道路舗装工事、建築工事等を行っている。
 災害は、井戸水の出を良くするために行った井戸底部の掘削工事で発生した。
 甲工業は、井戸の改修工事はほとんど経験がなかったが、井戸の所有者である発注者の指示により、次のような要頒で作業を行った。
[1] 井戸は、図−1のように直径83cm、長さ60cmのコンクリート製の井側8個を接続してつくられていたが、これをドラグ・ショベルにより周囲の土砂を掘削しながら上部から一つずつ取り除く。
[2] 井側をすべて取り除いた際、さらに底部を掘削し井戸を掘り下げ、新たに用意した直径1mの井側3個を据え付け、その上に接続板を設け、さらにはじめに取り除いた井側6個を据え付け、井側の周囲に砕石を布設する。
[3] 井側どうしは、モルタルで接続し、井戸内部にはみ出たモルタルは、はしごで降りてぬぐい去る。
 被災者ら作業者は、災害発生の前日までに掘削と井側の据え付けの一部を終え、当日は、残った上部2個の井側の据え付けを行った。井側の据え付けの際に使用したモルタルが乾くのを待つ間井戸底部にたまった汚水の排水について打ち合せを行った。
 排水は、当初、電気ポンプを使用して試みたが出力が弱く思うように排水ができなかったので、これを断念し、発注者宅にあったエンジンポンプを用いて排水を行うことにした。エンジンポンプに付いていた吸水管は長さが短く、井戸底部には届かなかったためエンジンを起動してからポンプをロープで吊り下ろし、排水を開始した。
 排水開始後約20分して、汚水が出なくなったので、被災者は井戸底部の状態を確認するため井戸内部へ降りようとしたが、エンジンポンプの排気ガスで視界が悪く、また臭気も強かったので、発注者宅にあった有機ガス用防毒マスクを借用して井戸内部に入った。(防毒マスクは、発注者が養蚕を行っていたので、これに使用するホルマリンに対するものとして備え付けてあった。)
 被災者が井戸に入って2〜3分しても上がってこなかったので、心配した同僚が声をかけたが返事がなかったため、この同僚がはしごを降り、意識が朦朧としていた被災者を外部に救出した。被災者はすぐに近くの病院に運び込まれ、一酸化炭素中毒と診断された。

原因

[1] 井戸内部という自然換気の不十分な狭い場所でエンジンポンプを使用したこと。
[2] 被災者が使用した防毒マスクは、有機ガス用であり、一酸化炭素に対しては不適切であったこと。
[3] 現場において安全衛生管理を行う者が明確に定められていなかったこと。
[4] 作業者に対して、何らの安全衛生教育も行われておらず、作業者の危険有害作業に対する認識が不十分であったこと。

対策

[1] 井戸等自然換気の不十分な場所においては、エンジンポンプ等内燃機関を有する機器を使用しないこと。
[2] やむを得ず使用する場合には、換気を十分に行い、立入る場合には、有害ガスの濃度を測定する等作業者の健康障害を防止するための措置を講じること。
[3] 現場において安全衛生管理を行う者を選定し、安全衛生管理手法について教育を実施し、安全衛生管理を行わせること。
[4] 作業者に対して系統的な安全衛生教育を実施すること。
[5] 災害発生等緊急時に使用するための設備、呼吸用保護具等を整備しておくこと。