下水道の地下管渠のマンホールにおける酸欠災害
業種 | 上下水道工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 上下水道工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.960
発生状況
株式会社甲社は土木工事業を営む事業者であり、災害は、同社が請負った新設の下水道ポンプ場から、約200mほど離れた近くの河川敷を通っている既設の下水道までの放流渠の敷設を行う工事において発生した。災害発生当時、放流渠敷設工事はポンプ場から川の堤防の手前のところまで終了しており、残りの工事は、放流渠を延長して河川敷の地下を走っている下水道の会所に接続するものであった。
会所とは、地下に埋設された管渠を一定の適切な距離ごとに管理するための箱型の空間であって、その上部にマンホールが設けてあり、点検清掃のために地上から地下管渠に降りられるようになっている。本工事の場合、会所は支流となる放流渠からの接続に用いられることになっていた。
マンホールは、内径820mm、蓋の外径920mm、深さ6.1mの円筒形であり、内径の西側に昇降用の鉄製タラップが2列取り付けられていた。また、このマンホールは長期間開放されていないものであった。
災害発生当日、甲社は、放流渠埋設工事を河川敷内でとりかかるため、その下準備として、マンホールを開いてタラップ等の昇降設備の状況、マンホールの深さ、会所の上部までの深さ等について調べることとした。
甲社の現場監督である被災者A及び同僚Bの両名は、午前中、他の現場において監督に当たっていたが、午後2時半頃から2人で本工事現場のマンホールの蓋を開く作業にとりかかった。約10分ほどかかってマンホールの蓋をあけたところ、中から下水の流れる音が聞こえ、また、鼻をつくようないやな臭いが漂ってきたため、ガスを吸っては危ないと思い、さらに30分ほど蓋を開放した状態にしてガスを抜くこととした。
30分ほどすると、ガス臭さが感じられなくなったため、Aはメジャーによる測定をBは図面への記入を担当することとした。
このため、まずAが、メジャーで地上から会所の上部までの距離を測るため、マンホールに入ろうとした。すると、そのとき、小学生を連れた通行人がマンホールに近寄ってきたため、Bが通行人を約10m程、危険でない場所まで誘導した。そして戻るとAの姿が消えており、マンホールの内部をのぞくとヘルメットが流れて行くのが見えた。
Bは、直ちに救急車、レスキュー隊の出動を要請し、下流のマンホールを次々に開いて救出に備えた。しばらくして、レスキュー隊が到着し、捜索した結果、落ちたマンホールから2つ目と3つ目のマンホールの間の水路でAが倒れているのが発見され、運び出されたが、既に死亡していた。
災害発生後、マンホール内の酸素濃度を測定した結果、マンホールの出口近くまで酸素欠乏状態であった。
原因
1. マンホールを開放した際、作業環境測定を実施しなかったこと。2. マンホール内の換気が不十分であったこと。
3. 墜落防止措置を講じなかったこと。
4. 作業者に対し、酸素欠乏危険作業にかかる特別教育を行わなかったこと。
対策
1. 第2種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者から、酸素欠乏危険作業主任者を選任し、所定の職務を行わせること。2. その日の作業を開始する前に、作業場の空気中の酸素及び硫化水素の濃度を酸素欠乏危険作業主任者に測定させること。
3. 作業場の空気中の酸素の濃度を18%以上、かつ硫化水素の濃度を10ppm以下に保つように換気すること。
4. 作業者が、酸素欠乏症及び硫化水素中毒にかかって転落するおそれのあるときは、安全帯を使用させる等、転落防止措置を講じること。
5. 酸素欠乏危険作業に作業者を就かせる時は、作業者に対し、特別教育を行うこと。