汚水桝改修工事において発生した硫化水素中毒
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.959
発生状況
災害発生事業場である甲社は、道路工事業等を営む事業者であり、本件災害は、同社が請負った社宅駐車場の舗装及び排水設備の改修工事現場で発生したものである。その工事の概要は、
[1] 駐車場の旧舗装面上に、5cmから15cmの厚さで、新たに舗装を施すこと。
[2] 次に駐車場内の既設の汚水桝、雑排水桝について、その高さを新舗装面に合わせること。
[3] 蓋を新品に取り換えること。
[4] 最後に、汚水桝等の中にたまった小石、コンクリート片を除去し、桝内部を清掃することであった。
なお、災害発生当日には、既に舗装工事及び汚水桝等の改修工事は終了していた。
災害発生当日、甲社の作業者Aは、単独で、午前9時頃から、汚水桝、雑排水桝の内部の清掃を行うこととした。具体的な作業としては、汚水桝、雑排水桝の中に直接上半身を入れ、その中に堆積した小石、コンクリート片をパイプでかき集め、ゴム手袋をした手で直接すくい出すというものであった。作業を行うに当たり、排水管は小石等でつまって、汚水が、ほとんど流れない状態になっていたため、汚水桝の中には、大量の汚物が堆積していた。そのため、Aは、堆積した汚物をかきまぜながら、小石等をすくい出していた。
なお、この排水施設は、社宅居住者が常時使用しており、当該作業中にも汚物がしばしば流れ込むという状態であった。
Aは、作業開始後しばらくすると気分が悪くなってきたが、無理して作業を続けた。午後4時頃から、頭痛、咳、発熱等が一段と激しくなり、作業を中断し、自ら、病院へ行ったところ、硫化水素中毒と診断され、そのまま入院した。
これは、汚水桝の内部に滞留していた汚物(し尿)に含まれる有機物の分解により、硫化水素が発生したものである。
原因
し尿、汚水等腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、槽等の内部における作業は、労働安全衛生法施行令別表第6及び酸素欠乏症等防止規則により、酸素欠乏症及び硫化水素中毒にかかるおそれのある作業(第2種酸素欠乏危険作業)に指定されている。しかし、本件作業についてみると、作業者及び現場責任者に酸素欠乏症、硫化水素中毒等に関する知識がなく、かつ、工事施工計画段階で、酸素欠乏危険場所に対する検討が行われていなかったため、作業環境測定の実施等基本的な対策が講じられていなかったことにある。
対策
1 工事の規模の大小にかかわりなく、工事施工計画段階において、周囲の環境、構築等を総合的に検討し、酸素欠乏危険場所を把握し、適切な対策を策定すること。2 酸素欠乏症、硫化水素中毒の危険がある作業に従事するすべての関係作業者に対し、工事開始前に特別な教育を行うこと。
3 第2種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業者を指揮させるとともに、その日の作業を開始する前等に作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定させること。
4 空気中の酸素の濃度を18パーセント以上、かつ、硫化水素の濃度を100万分の10以下に保つように換気させること。
5 酸素欠乏危険作業に作業者を従事させるときは、空気呼吸器等を常備しておき、救作業等の際に使用させること。